5日の東京都知事選の結果を見て、「もしかして日本はブラジルよりも右傾化しているのではないか」との思いを抱いた。
それは当選した現職の小池百合子知事に60%の支持があったから、というだけではない。3位に小野泰輔氏、5位に桜井誠氏が入っていたからだ。
小池氏も自民党時代は日本会議のメンバーで、知事就任後ももっぱら「弱者には冷たい」と揶揄されることでも知られている。それに加えて、小野氏は党員によるヘイト発言が目立つ日本維新の会、5位の桜井氏は元々は「在日特権を許さない市民の会」会長で韓国人差別の象徴的人物として知られている。この3人で全得票の7割以上を占めていたことになる。
今や「極右」というとボルソナロ大統領が世界的にも有名になっているが、同氏の人気がピークだった18年の大統領選でさえ、国民の支持は57%だった。現在は、昨年の法定アマゾンの森林火災問題や、今年に入ってからのセルジオ・モロ前法相の連邦政府離脱やコロナ対策の不手際などもあり、その人気も国民の3割ほどの支持にまで落ちている。今、ボルソナロ氏や、彼が推す候補が選挙に出ても6~7割の票を獲得して圧勝することは正直考えにくい。
「日本の方が今後は極右が強くなりそう」とコラム子が判断するポイントは3つある。まずひとつめは「極右的思想を唱える集団が複数あること」だ。ブラジルの場合、「右翼」というと「イコール・ボルソナロ」のイメージがあり、支持する政治家は9割5分、彼のもとへと駆け寄っているイメージがある。だが日本の場合は、「自民の日本会議派」に加え「維新」、さらに桜井氏が新たに立ち上げた「日本第一党」と3つもある。ボルソナロ氏ひとりがこけたら後継者が見つかりにくいのに比べると、だいぶ厚みがある。
2つ目は「極右の支持層が日本の方が広い」ということだ。ブラジルだとボルソナロ氏の支持者は、「富裕層や高齢者、白人人口の高い地域」と決まっていて、若い層や貧困層、女性には一貫して不人気のまま。このことは米国のトランプ大統領にもあてはまる。
ところが日本の場合、どの年齢層でも小池氏の支持が高い上に、10代、20代の年齢層で小野氏や桜井氏の支持が高かった。これは「年を取ることで保守化する」という欧米型のセオリーが、日本のネトウヨ・ネット文化では必ずしも通用しないことを示しているように見える。
そして3つ目は、日本でのネット管理者によるヘイトやフェイクニュース(虚報)への取り締まりの甘さだ。今や米国やブラジルのツイッターだと、その発言主がトランプ氏やボルソナロ氏であっても「問題あり」と判断されれば削除や警告が行われる。
また、米国ではヘイト発言を取り締まらないフェイスブックに対し400を超える企業が広告提供をボイコットする運動を起こし、ブラジルでも現在、虚報を流すサイトやユーチューブのチャンネルの管理人や、それらへの出資企業が捜査対象になるなど、極右勢力の台頭に一役買っていた個人や企業への取り締まりが厳しくなっている。
だが、日本からはそういう話は全く聞かれず、野放しのまま。その影響があるからなのか、日本のSNSを見ていると、ブラジルではそれほど批判的な声が盛り上がらずむしろ同情的でさえあった米国での「ブラック・ライヴス・マター」を、批判する声が驚くほどあがっていた。それと歩調を合わせるように、韓国人・中国人に対してのヘイトも相変わらずSNS上で見受けられる。
安倍首相がボルソナロ氏のような過激な言動をしないからなのか、国際的には日本のこうした情況は伝わっていない。だが、潜在的には、現在のブラジルよりもかなり極右体質になっているように、少なくともコラム子には見える。なにかの瞬間にそれが国際的に目立って出てくることもありえるような気がしている(陽)