高等裁判所のジョアン・オタヴィオ・デ・ノローニャ長官は9日、ラシャジーニャ疑惑で先月18日から逮捕されていた、フラヴィオ・ボルソナロ上議の元職員、ファブリシオ・ケイロス容疑者と、逃走中の妻マルシア・アギアル容疑者に対して、刑務所収容から自宅軟禁に処分を切り替えた。ボルソナロ家を喜ばせたこの判断に対して、「大統領から最高裁判事に指名されたくて忖度しているのか」と批判する声が一部メディアからあがっている。10日付現地紙が報じている。
自宅軟禁処分への切り替えの訴えは、ケイロス氏の弁護人がリオ地裁に対して起こしていたもの。弁護側はその理由を「新型コロナウイルスの流行によるもの」とした。弁護人は「ケイロス氏は大腸がんを患っており、前立腺の手術も受けている」として、感染のリスクが高いことを理由にあげた。
ケイロス氏がサンパウロ市のアルベルト・アインシュタイン病院で癌の手術を受けていたことは知られていたが、弁護人が主張する「2カ月前にサンパウロ州ブラガンサ・パウリスタで前立腺の手術を受けた」という話は知られていなかった。
今回、その手術に関しての資料は提出されていないが、弁護人は「病院側の法的判断により資料が送られなかった」と主張している。この当時、ケイロス氏は行方不明とされており、サンパウロ州アチバイア市にあるボルソナロ一家の元弁護士、フレデリック・ワセフ氏の別宅に潜伏していた。
この訴状は7日、リオ地裁から高等裁へ回された。すると9日、ノローニャ長官は「電子足輪をつける」という条件付きながら、ケイロス氏の釈放を認めた。また、現在同じラシャジーニャ疑惑で逮捕令状が出され逃走中のマルシア氏に対しても「ケイロス氏の看病が必要」として自宅軟禁とした。この件に関しての報告官はフェリックス・フィッシャー判事だったがノローニャ長官に判断の権限があった。
今回の判断には、世間から強い反感と疑問を招いている。その理由は、同長官がこれ以前に、コロナウイルスのパンデミックを理由とした逮捕者釈放を2度にわたって拒否する司法判断を下していたためだ。3月20日にはセアラー州の混雑した状態の監獄にいた囚人たちの釈放の訴えを却下。4月24日には、心臓に持病をもつ60歳の中国人企業家の訴えを退けていた。
反発を呼ぶもう一つの理由は、ノローニャ氏がボルソナロ大統領から「お気に入りの判事」として名指しされ、最高裁のイスが約束されているとの噂が立っていることだ。大統領は4月末、ノローニャ氏に関して「一目惚れした判事だ」との発言を行い、今年11月のセウソ・デ・メロ、来年のアウレーリオ・メロ両判事の定年に伴って生まれる空席に、指名される裏約束をしているのかとの噂を立てられていた。
その矢先の5月8日、コロナウイルスのテスト結果の提出を求められていたボルソナロ大統領に対し、同判事は「提出の必要はない」との判断を下し、最高裁に上告がされるまで大統領側に有利な判断を維持していた。
またノローニャ氏は、地元であるミナス・ジェライス州に第1連邦地域裁を作ろうと働きかけていることが報じられており、「大統領との蜜月はそれとの取引なのでは」とも囁かれている。