新型コロナウイルス感染収束後の経済回復のお膳立てを進めるために、ブラジル経済省は各種の新規投資受け入れ枠組み法案を採決する方向で、連邦議会の執行部と交渉している。上下水道普及率9割目指して「公衆衛生法案」を6月に両院通過させて後を受け、この法案群を景気回復の最重要課題として多くの議員が認識しており、税制改革法案と同時並行で、今後60日以内に承認させたい意向だ。
今後2カ月間は、延長された緊急支援金や、企業救済資金貸し出し対策によって、景気刺激する形で経済対策が採られる。外出自粛措置が始まって以来大きく下降した景気は、このところ若干のながら上向きになりつつある。
その後の本格的な経済回復プランとして、次のような規制変更法案が上程される予定だ。
現在、最も下院議会で交渉が進んでいるのは「新ガス法案」(Nova Lei do Gás )。天然ガス市場の規制を変更するもので、目下、最優先課題と認識されている。ノーボ党リーダーのパウロ・ガニメ下議によれば、すでに鉱山エネルギー専門部会で議論されて承認済み。十分に練られた法案なので、下院全体会議で修正されることなく承認を受けたいと考えている。すでに、緊急議会提案に必要な署名を集め終わっている。
エネルギー産業の業界団体Abraceのパウロ・ペドロサ会長は、「新ガス法案」は公衆衛生法案よりも重要だと考えている。新ガス法案では5年間で400万人分の雇用と、1年当たり600億レアルの新規投資呼び込みができると予測している。「例えばリオ州(で同計画実施)の場合、商品流通税(ICMS)とロイヤリティ料で年間50億レアルの増収が見込まれる」と試算している。
一方、上院で最も交渉が進んでいるのは「鉄道法案」だ。これは民間主導による鉄道建設や運営を可能にするもの。農業生産物輸送をする支線を増設する際など、この民間企業は新たな入札をせずに政府から受注できるようになる。
もう一つの優先提案法案としては、港湾部から船舶にパイプ輸送する設備基準の変更だ。政府筋は、カチア・アブレウ上院議員の同パイプ輸送刺激策が、政府のインフラ相の同種法案よりも先行しており、先に下院で議論開始されるだろうことを認めている。
その他、プレサル(岩塩層下)油田開発基準や電力部門基準の改正も上院で検討される。
下院では、インフラ開発のための社債発行を可能にするプロジェクト、電力公社エレトロブラスの公的基金と私的基金の分離や民営化などに関する議論も進行中だという。エレトロブラス民営化に反対してきた上院との話し合いが、ここ数週間でかなり進んでいる。
また、ロドリゴ・マイア下院議長からの要望を受け、ツクルイー発電所の経営権を、業界基金である「動力開発勘定(CDE、エネルギー開発のために電力会社が拠出する基金)に譲渡することを連邦政府は認めた。ツクルイー発電所を譲渡することで、連邦政府への見返りが180億レアルから200億レアルに増加、交渉しだいでは250億レアルに達する可能性もあるとしている。
これら新規投資受け入れの枠組み議論は、今まで抵抗勢力の動きで遅れてきた。だが連邦政府の経済スタッフは、今こそ議論を進めるときだと承知している。これら法案が可決されても、それが即投資につながる保証はない。とはいえ、パンデミック収束後の経済回復の動きを、新しい枠組みの中で潤滑に進めるというシグナルを投資家に送ることが重要だと同スタッフは考えている。