ブラジル中央銀行のロベルト・カンポス・ネット総裁は16日、新型コロナウイルス危機後のブラジル経済が「V字回復」できるとは考えられず、性急な経済回復期待はしない方が良いとの見解を示した。
16日に行われたイタウ銀行主催のオンラインイベントに参加した総裁は、今年のGDP(国内総生産)が6・4%後退するとの公式予測に対し、この2週間で回復の兆しが見えてきたことも強調した。
コロナ対策の緊急支援金が11月まで続く間、家庭所得が補われ、それが経済回復につながると見ている。連邦政府による企業救済資金貸出し対策の効果も出始めていると述べた。
ただし、経済回復の兆しが明確になったのと同時に、インフレの動きもわずかとはいえ、出てきていることに注目しているという。同総裁は「インフレが起きない場合もある。だが経済回復の兆しに比較して、より大きなインフレの動きが生まれる可能性も捨てきれない。現在のコロナ対策の結果が見え始める今後2、3週間のインフレデータが非常に重要である」と強調した。
中銀では現在、経済基本金利(Selic)年率を2・25%から、さらに引き下げる余地があるかどうかの検討をしているが、インフレの下方修正という見方から、上方修正に変えたことを認めた。だが「まだ判断するには早すぎる」と見ている。インフレを抑えるためには基本金利を上げることが必要となるので、これ以上の引き下げは難しくなる。
20年のインフレ目標は4%、21年は3・75%、22年は3・5%と、どんどん下げる方向で金利調整をしている。また常に前後に1・5ポイントの誤差を見ているので、仮にインフレが多少上昇しても想定範囲内であれば問題はない。今のところ「インフレはまだ〝お行儀が良い〟状態」と見ている。
15日付ヴァロール紙電子版によれば、2020年の拡大消費者物価指数(IPCA)は5月の1・77%から、1・60%に引き下げられた。外出自粛による経済活動停止で消費が抑えられ、インフレ率も下がった。だが来年には3・24%を予測している。
別のインフレ指数である全国消費者物価指数(INPC)も5月には2・45%だったが、2・09%に引き下げられた。ただし来年には3・56%を予測している。
ただし、ゼッツリオ・ヴァルガス財団(FGV)のインフレ指数であるIGP-DIは5月には4・49%にしていたが、6・58%に上げている。来年は4・11%と見ている。
今年に入ってからの激しい為替変動の原因解明に加え、本当にインフレは〝お行儀良い〟状態で推移するのかという読みは、今後の経済動態を見通す上で、重要な指標になりそうだ。