連邦政府の意向が連邦議会にもっと通じるように仲介をする役割(日本の国会対策委員長)を選び直すすべく、ボルソナロ大統領は下院の連邦政府副リーダー、ビア・キシス下議(社会自由党・PSL)を解任した。大統領が一方的な主張押し付けをやめて、中道勢力「セントロン」との結びつきを強める方向に進むのではないかとの憶測が流れはじめている。24日付現地紙が報じている。
ボルソナロ大統領は22日、キシス下議を下院連邦政府副リーダーから降ろす判断を下したが、この決断は驚きを持って迎えられた。それはキシス下議が、PSLの中で、カルラ・ザンべッリ下議と並ぶ大統領派の中心人物だったからだ。
同下議の解任理由となったのは、基礎教育開発基金(Fundeb)の憲法改正案(PEC)審議で、21日に圧倒的な敗北を喫したことだ。彼女が議会調整役の立場であるにもかかわらず、大統領側にたって反対投票したのはたった7人しかいなかった。彼女はそのひとりだ。大統領は当初、修正案に反対だったが、圧倒的多数で下院で承認された後、立場を一転して承認を称賛した。
今までも大統領の拒否権発動案件も、議会で再承認して押し通されるなど、与党の意向は連邦議会で無視される状況が続いている。セントロンを軸にして連邦議会への影響力を強めたい大統領としては、仕切り直しをする必要に駆られていた。
この件により、大統領がこれまでのような一方的な主張を推し進めるのをやめて、連邦議会との調整を強める方向へ変わるのではないかとの憶測が飛んでいる。
一説によると大統領は、キシス下議の連邦議会副リーダー後任として、自分とはそれほど近い関係ではないセントロン系人材を物色しているとも言われている。
ボルソナロ氏がこのような行動をとりはじめている背景には、連邦政府や連邦議会内で極右思想家オラーヴォ・デ・カルヴァーリョ氏派閥のイデオロギー路線を強く押し通した結果、大統領の罷免請求が殺到したため、それを避けたい意向があると見られている。
22年の大統領選再選の切り札として、貧困層を中心に人気の福祉政策「ボウサ・ファミリア」を拡大させる新政策「レンダ・ブラジル」を成功させたい意向が強くなっているとも言われている。
新政策を承認してもらうためには、議会で多数派を占めるセントロン勢力の力がどうしても必要となるが、彼らの不満が仲介役に集まっている。セントロンは彼女のみならず、やはり連邦政府との仲介役を務めるルイス・エドゥアルド・ラモス大統領府秘書室長官、ヴィットール・ウゴ連邦政府リーダー(PSL)の手腕にも不満が強いという。
このため、テメル政権で保健相をつとめたリカルド・バロス下議(進歩党・PP)がウゴ氏にとってかわるのではないかとの説も浮上している。ただし、ロドリゴ・マイア下院議長は、議会中枢がセントロンで固まりすぎるのを望んでいないという。
セントロンは「汚職政党」のイメージが強く、ボルソナロ氏も18年に汚職撲滅を唱えて大統領選に出馬した際には公然と批判も行なっていた。そのため、ボルソナロ氏のセントロン接近には世論の67%が反対しているとも言われている。とはいえ、大統領自身が下院議員時代の大半を、PPやブラジル労働党(PTB)といったセントロン系政党で過していた。