「大きな政府」を標榜した労働者党(PT)政権中には政府支出が際限なく膨らみ、ついには「ペダラーダ」と呼ばれる会計粉飾まで導入されたため、ジウマ大統領は会計責任を問われて罷免され、昇格して大統領になったテメル氏はそれを防ぐために「歳出上限法」を成立させた。それがコロナ禍の現在、景気回復策を組む上での足かせとなっていることから、連邦議会と連邦政府の経済スタッフは抜け道を探っている。28日付エスタード紙などが報じている。
コロナ禍で緊急事態宣言が出されている現在、歳出上限法は一時的に停止されている。それにかこつけて、連邦議会には今後数年分のインフレ投資予算を確保しようとする動きが出ている。それと両軸を成すように、230市民団体が連合となってパンデミック対策費捻出を理由に上限を取り除く動きが活発化している。
これらと期を一にするように先日、基礎教育開発基金(Fundeb)を常設させる憲法改正案(PEC)の審議に際し、経済省の経済スタッフは同基金の資金を新設予定の社会保障政策「レンダ・ブラジル」にも使えるようにする提案をした。
これは「ボウサ・ファミリア」を発展的に解消させて、8月から始めるつもりの大型プログラムだ。それには膨大な予算が必要であり、同開発基金は教育分野なので歳出上限法の枠外にあるため、経済スタッフはそれを抜け道にして社会保障予算を補填する腹積もりだった。だが、セントロンと意見が合わず、その提案は全面敗北した。
これまで経済スタッフは歳出上限法を遵守するスタンスを見せてきた。中央銀行が今の低金利政策を長期的に維持するためには、政府支出を激増させてインフレ懸念を起こすことを避けねばならず、その点を国際金融筋から注視されているからだ。
Fundeb敗北後、次の抜け道作りとして、ヴァルテル・ブラガ・ネット官房長官とパウロ・ゲデス経済相は予算執行委員会(JEO)を結成した。それは、パンデミック後の経済回復策として特別インフラ整備費350億レアルを歳出上限の枠外におくことを、連邦会計監査院(TCU)に協議するように依頼した。この提案は一般の反応が悪く、結局は棚上げされた。
この交渉に関わった関係者筋によれば、これらの動きの基本的なアイデアは、歳出上限の枠の外にある「特別会計」(créditos extraordinários )で使用されずに残っているものをかき集めて、今後2、3年間のインフラ予算に当てることだという。この特別会計の使い道は12月31日までに予算に計上されなければならない。予算執行はその後でもかまわない。
連邦政府はパンデミック対策費として、すでに5906億レアルの特別会計を組んでいる。うち2847億レアルはほぼ支払い済み。この関係者筋によれば、残りのパンデミック対策費の10~20%が浮いている可能性があり、議会はこれを利用してパンデミック後の経済回復用の公共インフラ工事に使いたいと考えているという。
すでにコロナ対策両院特別委員会は、連邦政府に対して特別会計で浮いた分の使い道をどうするかの交渉を始めている。