連邦政府が、新型コロナウイルスに関する報告書で、感染者や死者増の責任を知事や市長になすりつけるような表現をして連邦議員などに配布していた事実が明らかになり、批判の声が上がっている。10日付現地紙が報じている。
これは連邦政府が10日に発表した報告書で明らかになった。この報告書は8日にコロナによる死者が10万人に達した時点でのデータを元にしたもので、この日に大統領府から、政府支持派の連邦議員などに配られた。
その報告書では、保健省データに基づいて、感染者数、死者数、回復者数などと並行して、各州や各市の感染者数、死者数のランキングも示されていた。
その感染者数のランキングにはサンパウロ州、リオ・グランデ・ド・スル州、バイア州、ミナス・ジェライス州、サンタカタリーナ州が入っており、州名の下には、記入される必然性のない州知事の名前があえて記されていた。
1位のサンパウロ州のジョアン・ドリア州知事は、ボルソナロ大統領と敵対関係にあり、互いに批判の応酬を展開していることで知られている。2位のリオ・グランデ・ド・スル州のエドゥアルド・レイテ州知事もドリア氏と同じ民主社会党(PSDB)の所属。3位のバイア州のルイ・コスタ知事は政敵・労働者党(労働者党)の所属だ。
4位のMG州のロメウ・ゼマ知事と5位SC州のコマンダンテ・モイゼズ知事は大統領支持の知事だが、大統領の前所属党・社会自由党(PSL)のモイゼズ氏は「コマンダンテ(司令官)」と愛称で書かれていた。
上位5市であるサンパウロ市、ブラジリア、リオ市、サルバドール(バイア州)、フォルタレーザ(セアラー州)も市長名と共に書かれていたが、リオ市長を除けば、いずれも敵対関係にある、もしくは過去に大統領批判を行った市長ばかり。
この報告書を見た連邦議員からは次々と不満の声があがっている。セントロン系政党の自由党(PL)の下院副リーダーのマルセロ・ラモス下議は「これではコロナ死者の責任を地方自治体の長に押し付けているようだ」と不満を示した。
野党・ブラジル社会党(PSB)の下院リーダー、アレシャンドレ・モロン下議も「これまでも責任逃れをしてきたが、何万人も命を落とした状況で、また知事や市長に責任をなすりつけるとは情けない。大統領として国民が望まない行為だ」と厳しく批判した。
一方、ボルソナロ大統領は10日、ツイッターで「コロナの死者が多いのは、命を救う薬を推奨することを批判するメディアがあるからだ」として、自身が以前からコロナ治療薬として勧めているクロロキンに批判的な報道を行っているグローボTV局のせいだとする説を唱えた。クロロキンはコロナに対しての医学的、科学的な効用が証明されておらず、治験そのものを禁止している国もある薬品として知られている。