ボルソナロ大統領は13日、「新型コロナウイルス対策のためなら歳出上限を破ることもありえる」と語った。この前日には、パウロ・ゲデス経済相やロドリゴ・マイア下院議長が唱える歳出上限厳守を支持したばかりだった。この背景にはゲデス経済相と連邦政府内の閣僚らとの間での意見の相違があるという。14日付現地紙が報じている。
毎週木曜恒例のネット生放送の席で大統領は、「歳出上限を破ることに何の問題がある? すでにコロナ対策のために“戦争予算”(非常事態時の財政支出増を認めた憲法改正法案)を通過させているではないか。すでに7千億レアルも上限を破ってるのに、もう200億レアルくらい破ることのどこが問題だと言うんだ」と発言した。「ゲデス氏だって既に、上限を破る可能性をマーケットに示唆している。抜け道を作ってな。だけど一方で『抜け道は認めない』という人もいる」とも言った。
これは11日にゲデス経済相がマイア下院議長とセントロンのリーダー、アルトゥール・リラ下議(進歩党・PP)と会議を行ったあと、マイア議長が「歳出上限破りに抜け道はない」と発言したことを指している。
歳出上限法は2016年に制定され、次年度予算はインフレ率以上に増額することが認められていない。今年はコロナ禍緊急事態として特別に歳出上限法を考慮しなくても良いが、現在審議中の2021年度予算は当然縛られる。だが閣僚内には予算増額を画策している一派がいるといわれ、そのせめぎ合いが水面下で行われ、あちこちに関連発言として噴出している。
この件に関しては12日、ボルソナロ大統領自身も「歳出上限は守るべき」との意見を表明していた。11日に経済省の主要スタッフ2人が辞任して激震が走った直後であっただけに、ゲデス氏を立てる意味で行われた発言だった。というのも、ゲデス氏にとって歳出上限厳守は、経済ポリシーの中核をなすものだからだ。
しかし、12日付のコレイオ・ブラジリエンセ紙によれば、連邦政府内の閣僚の数人がボルソナロ大統領に歳出上限を破るよう進言している状況があるという。それは11日にゲデス氏らが行った会議でも話題にのぼっていたという。
その会議でゲデス氏は「歳出上限を破れば再選が見えてくると言って大統領をそそのかしている人がいるが、それは逆だ。そんなことをすれば大統領は財政責任を問われ、罷免への道まっしぐらになってしまう」と強い懸念を示したとされている。
大統領はこのネット放送の中で、サンフランシスコ川の灌漑事業のような北東部でのプロジェクトなどへの投資を求め、マーケットに対して愛国的な姿勢を求めている。