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≪ブラジル≫上院が大統領拒否権却下で波紋=公務員給与調整を有効に=20日から下院でも審理

19日のボルソナロ大統領(Marcelo Casal/Agencia Brasil)

 ボルソナロ大統領が公務員給与調整に拒否権を使ったことに関する審議と投票が19日に上院で行われ、投票結果42対30で却下された。連邦政府の意思が覆され、敗北を喫したと20日付現地サイトが報じている。
 5月下旬、連邦議会が発案した「新型コロナウイルスの援助金として、国は州や市に対して600億レアルの資金援助を行う」という法案を、大統領が承認した。この時、承認条件として、大統領は4項に拒否権を発動した。
 そのひとつが「公務員の給与調整」だった。大統領は「いかなる部門も21年末まで給与調整を行うことはできない」とし、市や州への600億レアル支援を承認することと引き換えに、その財源として給与調整を止めた。
 ここで給与調整を行うと、連邦公務員への支払いの節約額の3分の2を使わざるをえなくなるからだという。それを上院がひっくり返したことで、政府はその両方を支出することが必要になった。
 ただし、この法案の「公務員」には、医療部門と治安部門の人員など、清掃関係者や葬儀関係者、ソーシャル・ワーカーなど、コロナ禍最前線で働く人も含められていたために、抵抗が強かった。
 19日、上院でこの件に関しての投票が行われた結果、42対30で大統領の拒否事項が却下され、再び有効になった。上院の連邦政府リーダーのエドゥアルド・ゴメス上議(民主運動・MDB)は、「これが却下されてしまうと、国は1300億レアルの損害を受けることになる」と嘆いた。

 だが、マジョール・オリンピオ上議(社会自由党・PSL)は「前線で働いている人は既に多くが命を落としている」として、給与調整への拒否権が却下されたことを喜んだ。
 この結果を受け、下院では20日から審議を始めた。連邦政府には上院敗北は予想外のことだったため、政府はロドリゴ・マイア下院議長やセントロン系政党のリーダーに対し、大統領の拒否権を生かすよう依頼している。
 だが、セントロン系の下議たちは「拒否項目を保つのはかなり難しい」との見解を示しているという。彼らも「コロナ最前線で働く人たちの生活や命は大切だ」との考えを支持しているためだ。
 パウロ・ゲデス経済相は今回の敗北に関して「(市や州の)医療部門に使うべき金を公務員の給料に使うなど犯罪だ」として憤慨している。
 19日の上院では、ボルソナロ大統領の、中小企業支援プログラムに関して使った拒否権に関しても64対2の圧倒的多数で却下された。
 この上院での敗北は20日に起こったドル高の理由のひとつにもなっている。