米国の連邦準備制度理事会(米国中央銀行、FRB)は、19日に発表した最新の金融政策決定会合の議事録で、ブラジルにおきている「政治的混乱」と新型コロナウイルスの感染拡大が原因で6月から7月にレアルが対ドルで下落したことに言及した。19日午後5時付けフォーリャ紙サイトなどが報じた。
FRBが定期的に開く金融政策の最高意思決定会合、連邦公開市場委員会(FOMC)は同議事録の中で、「ブラジル中銀による利下げが続く一方で、新型コロナウイルスの症例が増加し、ブラジルの政治的混乱が進む中でレアルは対ドルで約5%下落した」と伝えている。
レアルは世界で、カーボベルデの通貨エスクードに次ぐワースト2位となった。2020年にレアルは27・3%の切り下げとなり、主要通貨の中では最大の下げ幅となった。
FRB議事録では、新型コロナウイルスの壊滅的な感染拡大の影響により、米国の経済回復が非常に不確実性の高い状況に直面していると懸念を示している。同理事会によると、5月、6月に見られた雇用の急速な回復は減速したとし、労働市場のさらなる「大幅な改善」は、企業活動の「広範かつ持続的な」再開にかかっているという。
今月19日の取引でも、FOMCの議事録発表後にドルは対レアルで上昇を加速させ、5月以来の高値となる1・16%高の(1ドル)5・5350レアルで取引を終えた。同日、ブラジル証券取引所の主要な指数であるボベスパ指数(Ibovespa)は1・2%下落し、10万ポイントで取引を閉じた。
19日、ボルソナロ大統領によって拒否権発動された「21年末までの公務員給与調整法案」が、上院によって再可決され、昇給可能になった。ゲデス経済相は上院の再可決を裏切り行為とみなし、「犯罪的だ」と発言。これも、レアル安・株価下落を後押しした。
翌20日朝、午前10時過ぎにボベスパ指数は、前日の流れから10万Pを割って一時9万9259Pを記録した。だが、ボルソナロ大統領の公務員昇給調整禁止を支持するロドリゴ・マイア下院議長の発言が市場に好感されて戻し、その後は10万1000Pをはさんでもみあうまで戻し、10万1467Pで終了した。
為替は20日午前11時にドル高に振れて、一時5・7レアル目前まで下落した。その後は、5・6レアル前後で押し合った。
世界第2位の多さとなっているコロナ死者が連日1千人という高止まり状況が続く中、連邦政府は8月末までに2021年度予算案を、連邦議会に提出する必要がある。上院で起きた「犯罪的行為」は、連邦政府からセントロンへの根回しが足りない証拠と見る向きがある。
今後、上下両院で審議されるのと同時に、11月の統一地方選に向けての選挙活動が本格化する。その中で、FOMCの議事録にある「政治的混乱」がもっと起きれば、更なるレアル下落、株価への悪影響につながる可能性がある。