沖縄県の唄『島唄』は、「デイゴの花が咲き 、風を呼び、嵐がきた」で始まります。宮沢 和史 が作詞・作曲し、1993年に発表された沖縄県を代表する唄です。150万枚売り上げる大ヒットとなり、レコード大賞を受賞をしました。
宮沢氏がひめゆり平和記念資料館を訪れた折り、ひめゆり学徒隊の生き残りのおばあちゃんと出会い、洞窟の中で逃げ場を失った人々が捕虜になるのを恐れ、集団自決をした話を聞いて涙が止まらなかったそうです。米軍の沖縄攻撃は1945年春、デイゴの花が咲き、咲き乱れ、花が散る頃でした。
宮沢氏は、激戦で亡くなった御魂(みたま)に対し、 「遥か遠い東の海の彼方にある神界 (ニライカナイ) に戻ってゆきなさい」と唄を作りました。島唄は沖縄戦で亡くなった人々への鎮魂の唄であり、反戦の唄です。
ブラジルには、沖縄のデイゴに似た木が個人の敷地、公園などでよく見かけます。トゲがあり、8月、9月に真っ赤な花を付ける小木です。
デイゴ属はエリトリーナ(学名Erythrina)と言い、インド・東南アジアそして南米が原産地です。沖縄のデイゴはE.Variegataでインド、マレー半島原産です。 樹高10mから15m。枝先に穂状の燃えるような赤い花を咲かせます。ブラジルの小型のデイゴはブラジル原産で学名E.Speciosa、ブラジルではMulungu do Litoralと呼ばれております。
日本でよく知られているアメリカデイゴ、学名E.Crista Galli はブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、アルゼンチンが原産地です。ですが 同じ種類でもブラジルのは色が薄く、日本にあるのはアルゼンチンなどの南の方のデイゴで、紅いのが好まれています。
樹高は6から10mで横に広がり、デイゴの仲間では最も寒さに強い種類です。英語の発音でエリスリーナとも呼ばれているので北米原産と思っている人がほとんどと思うと残念です。
これらの他に、ブラジルには20mぐらい伸びるデイゴが4種類あります。色は橙系です。デイゴの花は沖縄県の県花です。ちなみに、アメリカデイゴ (海紅豆)カイコウズは鹿児島県の県木です。
さて、国道フェルナンデイアスをアチバイアからサンパウロに向かう途中、マイリポラン市テーラ・プレッタの最も標高の高い地点の少し手前、右下方の森の中と、1Km下って右側上方の崖に、8月になると橙色の花が見事に咲きます。
聖北地方の自然林では春一番先に咲く花ですので目立ちます。半世紀前からその樹に目をつけて、自分の敷地内に植えたいと思っていました。ですが、それが叶わず、50年過ぎてしまいました。
ところが最近、私の農場内でヤシの木の間に橙色の花を初めて見つけました。今まで何の樹木か分からなかったので、調べてみると、あの望んでいたデイゴだったのです。驚きました。
ヤシの高いところに時々トゥカーノが止まっているので、種子を運んでくれたのでしょう。幹の太さは直径30cm、樹高12m。木肌は縦に溝があり、薄茶ベージュ色に近く、枯れ木と見違える珍しい色です。
コロナ禍によって、毎日終活のつもりで農場内の気付いたところから整理・修繕をしながら自粛生活をしているこの時に、神様が私に素晴らしい贈り物 、花をつけるまで大きくなった成木を恵んで下さいました。
デイゴは豆科です。根留菌によって窒素を固定する能力が高く、コーヒー・カカオ栽培の日陰樹、又は牧場の日陰樹に利用されています。そして、蜜を求めて小鳥がよく集まっていて、蜂鳥ベージャ・フロールも来ておりますから、甘い蜜を多く出すのでしょう。この花の少ない時期の大切な蜜源です。豆にはアルカイドを含みインジオは薬用に利用しています。
ブラジルには誇るべきデイゴのような原産の美しい花木があるのに、植樹されていないのは種子に含まれる成分のためなのだろうか。別名・男の機能を失う Capa Homemと呼ばれていますから・・・。それにしても、花期が1カ月以上と長く、きれいな珍しい色の花なので 、誠にもったいない。
「近くの森にもっと赤みの強いのを見たことがある」との情報がある。喜寿に近くなったが、ぜひ種子を求めて殖やしたいものです。