連邦政府は25日、新たな大型経済再興政策「プロ・ブラジル」の発表を延期した。その背景には福祉政策「レンダ・ブラジル」の受給対象者への支払額をめぐって、ボルソナロ大統領とパウロ・ゲデス経済相との意見が割れたことがあげられている。25日付現地紙が報じている。
「プロ・ブラジル」発表が延期になった背景には、24日にボルソナロ大統領と経済スタッフが行った会議があった。この会議で経済スタッフは、低所得者世帯を支援するための「レンダ・ブラジル」による生活扶助額を月額平均247レアルとする提案を行った。
だが、ボルソナロ氏がこの額を「低すぎる」とし、「せめて300レアルはほしい」と反発したという。大統領は24日、取材を行った記者団に対しても「現在支給しているコロナ緊急支援金と同額の600レアルは維持できないが、200レアルということもない。その間のどこかだ」と答えている。
そこには、これまでの「ボウサ・ファミリア」に替わる福祉政策「レンダ・ブラジル」を成功させたいとするボルソナロ氏の強い思惑があると見られている。レンダ・ブラジルは、コロナ緊急支援金からの切替のタイミングでの導入が検討されており、ボウサ・ファミリアを受給している1420万世帯と、コロナ緊急支援金を受給している人たちを対象とする意向だ。
18年の大統領選で労働者党のフェルナンド・ハダジ候補に敗北を喫し、これまでもボルソナロ政権への支持者が少なかった北東部での大統領への支持率を上げるのに、コロナ緊急支援金は貢献した。
ボルソナロ大統領としては、現行のボウサ・ファミリアの生活扶助額の月額平均190レアルを上回る支給額を提示して、コロナ禍で得た低所得者層からの支持を維持し、その勢いを22年の大統領選へとつなげたいところだ。その意味でも、支給額が低すぎて、イメージダウンを招くのは避けたいのが本心だ。
だが、経済スタッフとしては、公的負債が国内総生産(GDP)の100%に迫っている現実があり、これ以上、財政状況を悪化させたくない。600レアルの緊急支援金は、月に500億レアルの負担増を生じさせており、連邦政府はすでに、2540億レアルを緊急支援金に費やしている。
そのため、ゲデス経済相は最初200レアルを提示していたが、反対が多かったため、それは諦めた。だが「300レアル以上は出せない」との線は譲っていない。
さらに、大統領とゲデス経済相はレンダ・ブラジルに関して、その他の点でも意見の相違があるという。年間325億レアルかかるボウサ・ファミリアより、レンダ・ブラジルの予算は200億レアルほど高くなる予定。
その財源を確保するために、ゲデス氏は、月収が最低賃金二つまでの労働者に支給されるアボノ・サラリアルや、禁漁期間中に漁師に払う支援金、薬品サービスのファルマシア・ポプラールなど、同氏が無駄だと思うサービスを廃止することを提案しているという。
事前には大型経済復興政策として注目されていた25日の「プロ・ブラジル」記者会見だったが、結局は住宅プログラム「ミーニャ・ヴィーダ、ミーニャ・カーザ」に替わる「カーザ・ヴェルデ・エ・アマレラ」の発表だけに終わった。
同プログラムは2024年までに低所得者160万世帯に住宅を供給(低金利で融資し、購入を支援)することを目的としており、他地域の人より購買力が低く、票田ともしたい北部と北東部の人々には、返済金利をより低く設定している。