26日、ボルソナロ大統領は公の場で、新福祉政策「レンダ・ブラジル」に関して、パウロ・ゲデス経済相が提案してきた支給額の低さを批判した。大統領得意の「fritura」(炒めること、言う事を聞かすために居づらくすること)が始まったとマスコミは見ている。大統領は同経済相に対し、3日の猶予を与え、同政策の再提案を求めている。27日付現地紙が報じている。
ボルソナロ大統領は26日、ミナス・ジェライス州イパチンガのウジミナス製鉄所の高炉の使用再開記念式典での演説の際、「昨日、経済スタッフとの会合を行ってレンダ・ブラジルに関する話合いを行ったが、いったん差し止めることにした。経済スタッフの案のままだと、とても議会には提出できない」と酷評し、「極貧の人たちに金を与えるために、貧しい人たちの金を奪うわけにはいかない」と語った。
レンダ・ブラジルは2021年以降、現行の「ボウサ・ファミリア(BF)」に替わる社会政策として導入されるもので、BFの受給者に加え、コロナウイルスの緊急支援金の受給者を想定して行うものだ。
その支給額を巡り、ボルソナロ大統領はこの日も、以前から公言していた「200レアルと600レアルの間」という言い方を繰り返したが、BF支給額190レアルと大差ない額ではなく、大きく超える金額にすることを最低線としている。
大統領自身は、「せめて300レアルを支給したい」と考えている。300レアルは、コロナ対策として失業者らに支給する緊急支援金を年末まで継続する場合の支給予定額で、大統領としてはこれ以下の金額は受け入れられないようだ。
だが、パウロ・ゲデス経済相は「300レアル以上」支給すれば「財政支出の上限を破る」などの観点から強く反対しており、「IR(所得税)の控除(減額)を廃止しない限り、300レアル支給は不可能」との見解を示している。
費用捻出のため、経済省と市民省はすでに、経済相が「不要」と判断している27の社会プログラムを廃止する方向で動いていると言われている。これらの社会プログラムには、月給が2最低賃金までの労働者に年に一度、最賃一つ分までを支給するアボノ・サラリアルなどが含まれており、議会から批判の声が出ている。
ボルソナロ大統領との会合でゲデス経済相が提示した支給額は247~270レアルだったと言われている。これでも譲歩した金額で、同政策作成当時に同経済相が考えていた平均月額は200レアルだった。
だが、大統領はこの額を不服とし、ゲデス氏に対して3日の猶予を与え、その間に修正案を出すように求めている。
今回の件に関しては、連邦政府関係者も大統領に強い理解を示している。それは、緊急支援金の影響で、従来は苦手としていた北東部で大統領支持率が上がったためだ。大統領周辺は、この政策の成功に22年の大統領選の命運がかかっていると見ている。
ゲデス経済相は26日の大統領発言を心外と受け止めているというが、修正案作成には応じる構えだ。今回の両者の対立で、関係者の間ではすでに、ゲデス氏が経済相の座を追われ、現中銀総裁のロベルト・カンポス・ネット氏が後任に就くのではないかとの噂が出回っている。