先住民の人権保護で国際的に知られるカイアポ族のラオニ・メトゥクチレ酋長(89)が新型コロナに感染した事が公表されたと8月31日付現地サイトが報じた。
ラオニ氏は肺炎や白血球数増加で、マット・グロッソ州クイアバ市から503キロのシノッピ市ドイス・ピニェイロス病院に入院した。同病院によると、同氏の感染は断層写真や血液検査で確認された。現在は熱もなく、人工呼吸器や酸素吸入も不要だ。
家族らの希望で、容態が安定していれば近日中に退院の見込みとだけ公表された。だがラオニ研究所では、同氏は高齢なため完全に回復してから退院するという。血液検査では既に、抗体も確認されている。
ラオニ氏は7月にも、胃腸を患って入院した。この時は脱水症状も起こしたため、最初に入院したコリデルの病院からシノッピの病院に移り、治療を受けた。同氏は糖尿気味で、6月に妻を亡くして以来、うつや脳血管障害も起こしていた。
ラオニ氏は先住民の権利保護のために戦っており、1989年にパラー州アウタミラ市シングーで開催された最初の先住民会議での歌手スティングとの会見は有名だ。二人は2009年にも、ベロ・モンテ水力発電所建設問題について語り合う会合に出席し、旧交を温めあった。
2012年にはフランスでフランソワ・オランド大統領(当時)に会い、法定アマゾンと先住民の保護を要請。2019年にも同国のエマニュエル・マクロン大統領に会って同様の申し入れを行っており、ボルソナロ大統領に「外国政府の駒に成り下がった」と批判されたりした。
ラオニ氏は比較的軽症だが、先住民へのコロナ感染拡大は深刻で、感染源と目される送電線設置工事関係者や金採掘者への抗議も広がっている。