《ブラジル》行政改革法案を議会に提出=現職公務員に影響なし=削減効果を疑問視する声も

ボルソナロ大統領は3日、連邦議会に行政改革法案を提出したが、現職の連邦政府、州、市の公務員にはほぼ影響しない内容で、関係者を驚かせている。3、4日付現地紙が報じている。
この改革案では、全国で約977万人、ブラジルの労働人口の約21%を占める公務員の数や支出を削減することが期待されており、財政支出を抑えるための最大の近道の一つとされていた。
公務員は法律で手厚く守られており、原則的に解雇がない。その数は右肩上がりに増えており、一般の労働者に比べて特権・恩典が多く、かねてから民間労働者からの批判の対象となっている。そのため、特権・恩典を削減するだけでも支出減の効果は期待できると見られていた。
だが、今回の改革案は「今後公務員になる人」のみを対象としたもので、現職にほぼ影響がない。さらに、今回の改革案では、給与その他の面で最も支出額が多い、議員や軍人、判事は適用対象外となっている。
ただし、これまでは一部の公務員に対して可能だった、不正をおかした場合の制裁措置としての強制退職(ただし、仕事はやめても、勤務年数などに応じた給与は受け取る)はできなくなる。
他の主な改正のポイントは、「勤務年数に応じた昇給、昇格の禁止」や「年30日を超える休暇取得の禁止」「収入減なしの交通費減額の禁止」「特殊技能職への採用の制限と一般職への採用緩和」などがある。
行政改革案は今年2月に連邦議会に提出される予定だったが、大統領が「2021年に先延ばししよう」と保留した。8月になり、アミウトン・モウロン副大統領が「行政改革案ならいつでも出せる。あとは大統領の政治的判断次第」と発言し、今回の改革法案提出となった。
この時期に同法案が提出された背景には、ロドリゴ・マイア下院議員の強い意向が働いていたともいわれている。マイア氏は、行政改革法案と税制改革法案の二つを年内に通過させることで、諸外国に対して財政再建に向けたブラジルの姿勢を強くアピールできると考えている。だからメディアによっては、今回の法案を「マイア議長の勝利」と報じているところもある。
今回の案は、大統領の権限をこれまで以上に拡大する内容を含んでおり、早くも、その点を危惧する声が出ている。また、短期の展望でも、長期でも、その効果は限定的と見る向きも少なくない。
改革法案の提出が大幅に遅れたことは、お役所仕事特有の事務の遅れなどを改善し、行政部門のデジタル化を管轄し、同法案作成にも関わっていたパウロ・ウエベル・デジタル部門局長の辞任も招いた。
他方、改革法案提出と共にマスコミが報じた、マイア議長とゲデス経済相をはじめとした経済スタッフとの不和も気がかりだ。
ゲデス経済相は、大統領が1日に「改革法案を議会に送る」と宣言した際も会見の席におり、行政改革の必要性も説いた。だが経済省のスタッフには、マイア氏と語ることを禁じているという。経済スタッフと話せなくなったことはマイア氏も明らかにしているが、予算案や行政改革法案といった重要法案の審議には議会と政府の緊密な対話や根回しが不可欠なため、今後の審議の展開も注目される。
行政改革法案は憲法補足法案であるため、承認には、下院と上院で60%以上の承認を2度ずつ得なければならない。