ブラジル・経済のグローバル化と多国籍企業研究会(Sobeet)が7日、中銀のデータを分析した結果、ブラジルへの外国投資のあり方が変化している事がわかったと発表したと8日付現地紙が報じた。
外国人投資家からの直接投資(IDP)を、公共部門(一次セクター)と工業、サービスに分けて分析した結果、2011~18年は平均14・3%に過ぎなかった一次セクターへの投資が、2019年~今年6月の平均では24・9%に急増しているという。
第一セクターの中でも目立つのは、石油・天然ガスの採掘や鉱物の採掘への投資だ。前者の場合の11~18年のIDPは8・3%だったが、19年以降は17・2%に増えた。鉱物採掘への投資も2・9%が4・5%に増えている。ブラジルでは油田開発などに関する入札が積極的に行われている事が、石油・天然ガスや鉱物の採掘への投資の伸びにも表れている。
他方、投資全体に占める割合が大きく落ち込んだのは工業への投資だ。11~18年の同部門への投資は34・6%に及んでいたが、19~20年は22・7%を占めるのみとなった。
サービス部門への投資も50・6%から51・9%に増えたが、一次セクターには及ばない。
外国投資は、合併や買収、新たな施設の建設、国外でのオペレーションで得た収益の再投資、企業間の融資といった形で実現する。19年から今年6月のIDPは総額633億ドルで、主な投資国は、米国、スペイン、フランス、中国だ。
Sobeet会長のルイス・アフォンソ・フェルナンデス・リマ氏によると、工業界へのIDPは世界的に減少傾向にあるが、ブラジルの場合、工業界への投資減額分が第一セクターに偏って投じられている点が、他の国々とは異なるという。
同氏によると、第一セクターへのIDP増加そのものは悪い事ではないが、雇用増加につながり難いという難点がある。
また、IDPに伴う技術移転や、サプライヤーや労働者、競合企業のトレーニングという面が、第一セクターでは著しく妨げられているという。
第一セクターへのIDPが増え、特定の産物への依存度が高まると、国際的なコモディティ価格変動の影響を受け易くなる。コモディティ価格が低い状態が続けばブラジルへの投資が減る可能性もあり、経常収支の赤字を埋めるための資金調達にも悪影響が出かねない。
工業界への投資減額と呼応するのは、世界全体の工業生産に占めるブラジルのシェア縮小や世界ランキングの低下だ。全国工業連合によると、18年はブラジルが世界全体の工業生産に占めるシェアは1・24%だったが、19年は1・19%に縮小。ブラジルのシェア縮小は1990年代に始まったが、2009年からは段々明確になった。それでもブラジルは2014年まで、工業生産上位10カ国に入っていたが、19年は16位だった。
ブラジル工業界の競争力低下は、付加価値の高い工業製品が輸出に占める割合や、世界貿易に占めるブラジルからの輸出額のシェアが縮小している事からも明らかだ。
18年はブラジルからの輸出が世界30位の0・88%を占めていた。19年はブラジル史上最低の0・82%の見込みだ。