サッカーがブラジル国内で再開されて、一月近くが経過した。その短い期間の中で楽しみなことが起こって来ている。
それは、昨年のU17W杯での世界一に貢献した選手たちのうち4人が、早速プロの世界で活躍していることだ。カイオ・ジョルジュ(サントス)、ペグロウ(インテルナシオナル)、タレス・マグノ(ヴァスコ・ダ・ガマ)、そしてガブリエル・ヴェロン(パルメイラス)。
この4人はW杯のときにも「攻撃カルテット」と目され、世界中のスカウトたちの注目を浴びていた。
18歳にして、いずれも上位チームのレギュラー・クラスでの出場を果たしている。中でもヴェロンに関しては、既に2得点を記録。強豪パルメイラスの後半逃げ切りの切り札になっている。
それにしてもここ数年、ブラジルの若手の早熟な出世が目立っている。今年20歳の世代からはヴィニシウス・ジュニオルがすでに名門レアル・マドリッドでレギュラーを獲得。また、アントニーが五輪代表のレギュラーとして活躍し、サンパウロからオランダの名門アヤックスに移籍。その初公式戦でもいきなり得点を決めている。
19歳の世代ではロドリゴが昨年サントスからレアル・マドリッドに移籍し、欧州チャンピオンズ・リーグで10代にしてハットトリックを達成する快挙を成し遂げた。
また、マルティネッリがイングランドの古豪アーセナルでフォワードのレギュラー・クラスとして活躍している。 もうここまで8人の選手の名前をあげている。
20歳以下でこれだけの注目選手がいる。彼らの年齢から判断するに、2030年に開催されるW杯でもまだ28~30歳だ。向こう3大会分は戦力の心配をしなくて良さそうだ。
そもそも2022年の大会はネイマール、コウチーニョ、カゼミロ、アリソンの世代が中心で、2026年はガブリエル・ジェズス、アルトゥール、リシャルリソンの世代のもの。そう考えると現在の時点で、すでに3世代分の厚みがあることにもなる。
コラム子がブラジルに越してきてサッカーを見はじめて10年になるが、ここまで層の厚い充実ぶりは記憶にない。20歳以下の選手たちが、ここまで早熟な台頭をはじめたのもつい最近のこと。これは一体なぜ起こったのだろう。
ひとつ考えられるのは、欧州の移民の子供たちの急速な台頭が、ブラジル・サッカー指導者たちの尻に火をつけたことだ。現在、ヨーロッパでは、アフリカ移民が積極的に若年層から戦力に組み込まれていくことでメキメキと力をつけている。
先天的な運動能力の高さと、貧困育ちのハングリーなバックグラウンドを持つ彼らは、社会の受け入れが整ってきたことで、その持てる実力が発揮できつつある。
それは18年W杯でフランスを優勝に導いたエムバッペ然り、スペインの名門バルセロナの17歳のストライカー、アンス・ファティもそう。イングランド代表もそうした背景から急速に力をつけている。
こうした国際サッカー界の新潮流にサッカー王国ブラジルが対抗するためには「若年齢層からの再活性化が必要」と、国内の指導者たちが判断したのではないか。現在の状況を見るにコラム子はそう思う。そして、現状でそれはうまく行っている。新世代の活躍に期待したいところだ。(陽)