棉の国際価格が値上がりしている事やドル高の影響で、ブラジル国内の棉の価格が8月末時点で20%も高騰している。
ブラジルでは米やフェイジョン(豆)などの食料品が値上がりし、庶民の懐を直撃しているが、衣類の製造に不可欠な棉の値上がりは、被服費の高騰を招く可能性がある。棉の値上がりで衣類も値上がりかと懸念する報道が、9月に入ってから目立っている。
だが、ブラジル繊維工業会(Abit)のフェルナンド・ピメンテル会長は、棉の価格上昇が衣類の消費者価格高騰に繋がるという考えを否定。収穫後の棉は、繊維を紡いで織った後、裁断、縫製、包装、流通など、多くの工程を経るため、棉価上昇の影響を受けるのは初期段階だけで、衣類価格に占める棉の原価の比重は7%程だという。
衣類のほぼ半分は棉を使用しておらず、棉の価格が高騰した分を全て消費者価格に転嫁しても、衣類価格は1%程度しか値上がりしないという。
繊維業界は今、新型コロナウイルスの感染拡大で止まっていた分を取り戻そうとしているため、国際価格の高まりと需要拡大が重なって棉が値上がりしているのであり、高騰は一時的なものと見る関係者も多い。
Abitによると、繊維工業が活動を再開したのは1カ月半前で、現在は皆が在庫確保に躍起になっているという。
このような動きを受け、サンパウロ州での棉の価格は一時、パンデミック前の454グラムあたり2・69レアルより24・9%高い3・36レアルに達したが、現在は16%前後高い3・10~3・15レアルに下がっているという。
サンパウロ総合大学の先端的応用経済研究センター(Cepea)によると、棉の価格が3・36レアルを記録したのは8月27日で、それ以後は徐々に値下がり中だ。ただ、3・1レアル台に入ってからは変動が少なくなり、高止まりしているという。
棉はコモディティの一つで、国際価格はニューヨークの市場の動きで決まる。現在の国際価格は454グラムあたり0・60ドルで、数年前に記録した1・0ドルには至っていない。Cepeaによると、ブラジル国内の価格急騰は、レアル安の影響だという。
なお、棉の生産者や加工業者らは、ブラジル国内で品不足が起こる可能性を否定した。今年は棉の収量が新記録を更新したからだ。ブラジルは世界第4位の棉生産国で、世界第2位の輸出国だ。
ブラジル綿花生産者協会(Abrapa)によれば、今年の綿花の収量は昨年より5%多い290万トンで、3年連続の新記録更新だという。
同協会によると、国内で使用されるのは約75万トンで、残りは輸出に回されるという。1~8月は、昨年収穫した分の一部を含む156万トンを輸出し、10億2千万ドルを売り上げている。ブラジルからの綿花の最大の購入国は中国だ。
国家配給公社は、国内の需要は57万トン、輸出分は192万トンで、残りの193万トンが端境期の需要にあてられる事になると見ている。(18日付G1サイトより)