ブラジル外務省がマイク・ポンペオ米国務長官を、ベネズエラ国境のあるロライマ州に招いた件に関して、連邦議員から次々と強い反発の声があがっている。18~21日付現地紙が報じている。
ポンペオ国務長官は18日、ロライマ州都ボア・ヴィスタを訪れた。同長官は、スリナムとガイアナに誕生した新政権への挨拶が主目的だったが、3時間ほどの空き時間を利用してロライマに寄った。
ポンペオ長官はその際、ベネズエラ移民の集まる施設も訪れている。この施設はテメル政権下で、ベネズエラ移民を受け入れるために作られた。
一部報道によると、この会合でポンペオ長官はベネズエラのマドゥーロ大統領に関して「今こそ政権から引きずり下ろすときだ」「麻薬取引の長」などとも呼んでいたとされる。
今回の同長官のロライマ訪問は、11月に迫った米国大統領選での中南米系国民の票獲得を目的としたものといわれている。トランプ大統領は、中南米左翼政権の象徴と見られるベネズエラのマドゥーロ独裁政権を攻撃し、他の中南米諸国と歩調を合わせている姿勢を示すことで、米国内に住む、反左翼の中南米移民の票を期待している。中南米移民は、選挙の行方を左右するフロリダ州に特に多い。
だが、このポンペオ氏の行為をめぐり、ブラジル政界では強い批判が沸き起こっている。ロドリゴ・マイア下院議長は「他国の政治に干渉しないという、我が国の外交の伝統を破る行為だ」として外務省を厳しく批判した。同議長は、米国大統領選まで46日しかないタイミングで今回の訪問が行われたことを、特に問題視している。
マイア議長による批判の後、歴代の外交官や外交委員会委員たちは相次いで、同議長の意見に賛同する姿勢を表明した。
上院でも強い不満の声があがっている。上院では、外務省が推薦・指名した復数の新たな大使に対するサバチーナ(口頭審査)を行う予定だったが、「これを全て中止にしては」という声まで実際に上がった。上院が説明を求めたことを受け、エルネスト・アラウージョ外相は24日に上院外交委員会に出向き、ポンペオ氏がロライマ州に訪れたことやその際の言動に関して、説明を行うことになっている。