最終日にクリーク・アンド・リバー社の松永雄さんが、日本文化として世界で広く普及される「アニメ」を中心にポップカルチャーを紹介。日本だけでなく海外人気も高い「ワンピース」「ナルト」「鬼滅の刃」などでも作品中でリーダーシップについてわかりやすく描かれているそう。スライドに並べられた3作品の画像から「一目でわかることは仲間が多いこと」だと解説。
今後、ビジネスでは「世界中の人やより多くの人と繋がりながら仕事をする機会が確実に増えていく」という。現在、松永さんがリーダーとして立ち上げる新規事業では、仮想空間で世界各国の人が瞬時に繋がるプラットフォームを作っている。「コロナ禍で直面したように対面での議論では制限も多く、規模が小さいものになる」と説明する。
3日間のオンライン研修を終えて土橋諭フェルナンドさん(三世、25歳)は、「学校はもう卒業したので、オンラインでの講義は新鮮。他の留学生とも会うことができて楽しかった」と振り返った。
土橋さんはサンパウロ州立総合大学の生物化学工学部を卒業後、今年春から京都大学でバイオテクノロジー分野を学ぶために留学予定だったが、コロナ禍により訪日が叶わずブラジルで待機している。そのため他の留学生と交流するのは今回が初めてだという。
最終日に「リーダー像」をプレゼンするために同じ班となった宮部マルコスたけしさん(二世、27歳)とヌネス・ダニエラさん(三世、33歳)は既に日本に留学。時差がある中、調節してグループワークに挑んだ。
他グループで挙げられたリーダー像についてヌネスさんは「女性やマイノリティーに含まれる人も多く嬉しい」と感想を述べた。ヌネスさんは保育園から小学6年生までの7年間を日本で過ごし、デカセギとして働く両親の苦労をまざまざと見てきたという。
帰伯後はポルトガル語を学び直すなどの苦労した。「ブラジルで大学に行けたのが奇跡」と当時を振り返る。両親や自分が苦労した経験から「日本にいる外国人に寄り添える実力を身につける」ため2018年から訪日し、桜美林大学大学院で言語教育科の日本語教育を専攻している。
南大河州の農業が盛んな地域の日系コミュニティーで育った宮部さんは、バイオテクノロジーを学ぶため、東京農業大学植物遺伝子工学研究室で遺伝子組み換えの研究を専攻。現代の大きな気候変動への耐性を強化する研究を行っており、「日本やブラジルだけでなく世界で技術を活かしたい」と目標を掲げる。
土橋さんは子供の頃から科学に興味があり、科学者ごっこなどで遊び「バカなこともやった」と昔を懐かしむ。植物に含まれる体に良い成分を人工的に作る研究に興味があり「それにより治療や薬をより安価にし、多くの人に行き渡ることができないか」と目標を抱き、この事業に応募した。
宮部さんは3日間の研修を通じ「日本文化への理解やリーダーシップを考えることは、私たち自身に行動を促すものだった感じました」と3日間を振り返った。
JICA本部の中南米部移住・計画課の藤井寛之さんは「中南米の日系社会やその世代間をつなぐこと、遠くはなれた人を繋ぐことを、留学生の皆さんに期待しています」と語った。
多様な価値観を持つ人の中で、多言語を道具のように使いこなしながら、いかにリーダーシップを発揮するかが、新時代の日系人リーダーには求められているようだ。