ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》マナウスで集団免疫が出来た?=献血者の血液分析から推定

《ブラジル》マナウスで集団免疫が出来た?=献血者の血液分析から推定

ピーク時のマナウス市内の墓地(22日付G1サイトの記事の一部)

 ブラジル北部アマゾナス州マナウス市で行われた調査で、同市では既に新型コロナウイルスに対する集団免疫が出来ている可能性がある事を示唆する結果が出た。
 注目の調査結果は21日にオンライン上で発表されたが、専門家などによる検証を受ける必要があり、科学雑誌にはまだ掲載されていない。
 サンパウロ総合大学(USP)医学部がサンパウロ州調査研究支援機関の支援を受けて行った調査は、マナウス市の血液銀行でサンプルを集めて分析するという形で進められ、最低44%、最大66%の人が新型コロナウイルスの抗体を持っている事がわかった。
 パーセンテージの差は、最初の検査で抗体が見つかったが、再検査時には抗体が発見されなかった人や、偽陰性と見られる人などを数えるか否かなどによって生じるものだ。新型コロナウイルスの抗体が時間の経過と共に消失する可能性がある事は、様々なところで言われている。
 マナウス市は5月頃に感染爆発が起きて医療崩壊も発生。病院の廊下に放置された遺体や、遺体を一時保管するために病院に横付けされた冷凍車、埋葬者が多すぎ、棺を重ねて埋葬して遺族から苦情が出て「葬儀崩壊」などの衝撃的な報道も続いていた。
 感染のピークとされる5月の調査での抗体保有率は45・9%で、1カ月後は64・8%、2カ月後は66・1%となっている。感染初期の3月と4月の調査では、抗体を持った人は各々0・7%と5%だった。
 調査員達は、抗体保有者のパーセンテージの伸びるペースが鈍ってきたのは、人々が感染拡大を怖れて社会的な隔離を強化した事などを反映している可能性を認める一方で、抗体を持つ人が増えた事で集団免疫に近い状態が生じ、新たな感染が起こり難くなった可能性もあると見ている。

 マナウス市やアマゾナス州はピーク時に一気に死亡率が高まった。アマゾナス州の場合、4月末の死亡率は100万人あたり103人だったが、5月末は4・8倍の495人に。
 当時は医療機関で対応しきれず、自宅で亡くなる人も出たが、その後は急速に感染者が増加するペースが鈍くなった。この事も集団免疫が出来た可能性を示唆すると見られている。
 ただ、調査用サンプルは血液銀行で献血をした人のもので、住民全体のパーセンテージと同じとは言えないという難点もある。一般的に献血者は健康な大人だからだ。
 また、現時点では新型コロナウイルスに関する集団免疫に関する研究が少なく、抗体を持った人が何%いれば、集団免疫が出来ているといえるかも明確ではない。
 同様の調査はサンパウロ市でも行われた。各月の抗体保持率は3月0・8%、4月3・1%、5月6・9%、6月16・1%、7月17・2%、8月22・4%だった。
 調査員によると、マナウス市同様のペースで抗体保持者が増えた場合、サンパウロ市の死亡率は現在より3倍高くなっていたと見ている。
 9月23日現在の死亡率は100万人あたり751人だから2253人で、国内最高の連邦直轄区の1044人をはるかに上回る事になる。アマゾナス州の現在の死亡率は100万人あたり961人。
 この調査の結果は、USPとオックスフォード(英国)、ハーヴァード(米国)の各大学、アマゾナス州やサンパウロ州、米国の研究機関などから選ばれた科学者による精査後に、科学雑誌に掲載される。(22日付アジェンシア・ブラジル、同G1サイトより)