ボルソナロ大統領は28日、新福祉政策「レンダ・シダダン」を行うことを発表した。これは、大統領自らによって中断宣言が先日出された「レンダ・ブラジル」に代わるものだが、この発表の時点では支給額など基本的なことへの言及がなく、その上、基礎教育開発基金(Fundeb)からの金を回すことなどが問題視されている。29日付現地紙が報じている。
連邦政府は、「ボウサ・ファミリア」の受給対象者を、コロナウイルスの緊急支援金受給者まで拡大した新福祉政策「レンダ・ブラジル」を準備していた。
だが、ボルソナロ大統領が、支給額の低さや、経済スタッフが資金源ねん出のために低所得者向け恩恵などをやめる可能性を探っていたことなどを理由に、大統領は「恵まれない人向けの恩典を取り上げるなど言語道断、レッドカードだ。もうボウサ・ファミリアのままでいい。22年の選挙まで新福祉政策の話は二度とするな」と経済スタッフに中断を言い渡していた。
ただし、緊急支援金が貧困層からの支持率を上げたと見られている。緊急支援金が終わった後もその支持を継続させるための新福祉政策を、22年の選挙の切り札にしたい政権内の政治家が多いため、今回名前をかえて復活したようだ。
28日、急きょ、新福祉政策の「レンダ・シダダン」導入が発表されたが、支給額をはじめ、具体的なことは明らかにされなかった。
「レンダ・ブラジル」ではその支給額が議論の中心となっていた。ボウサ・ファミリアでは月額平均190レアルが支給されているが、「せめて300レアル」を主張する大統領の意向に対し、経済省は200レアル台前半が限界として譲らなかった。
経済省にとって支給額を上げる障害となっているのは、パウロ・ゲデス経済相が経済運営の際に最も重視する「歳出上限」の枠を破りかねないことだ。支給対象や支給額を増やせば、その分、他の経費を削る必要が生じる。
支給額を上げるためには、連邦政府の資金源を増強する必要があるため、「レンダ・シダダン」の資金源が注目されるところ。基礎教育開発基金(Fundeb)がその資金源に含まれると報じられたことで、早くも政界や世論から強い反発が沸き起こっている。
Fundebは地方自治体の基礎教育に回されるための基金。2021年からは連邦政府の負担の割合を現行の10%から年々増やし、2026年には26%にすることが、7月に連邦議会で承認されたばかり。政府側がこの負担上昇に反対していたことなどから、同基金からの資金調達は、財政支出のコントロールを失った政府が、失政を隠すための策との見方まで出ている。
Fundebの金を回す案が浮上したのはこれがはじめてではない。7月にはFundebの新たな政府負担を決める審議の際、経済省はFundebから80億レアルを「レンダ・ブラジル」に割く案を提案しているが、不評につき、却下されていた。
レンダ・シダダンに伴う憲法改正法案では、「Fundebから最大5%の支出」との提案が盛り込まれているという。同法案では、個人や企業への負債を資金源に充てるという案もあるという。レンダ・シダダンは経済界からも不評で、28日の株式市場は下落すると同時に、ドルも上がった。