ボルソナロ大統領は5日、大統領官邸でロドリゴ・マイア下院議長らと会談を行い、「財政支出の上限死守」の念を押された。これで、大統領が強く望んでいる新福祉政策「レンダ・シダダン」の導入実現がより難しくなりそうだ。5日付現地サイトが報じている。
この朝食会には大統領とマイア議長のほか、ルイス・エドゥアルド・ラモス大統領府秘書室長官、2021年度の予算案と新福祉政策を導入するための緊急の憲法改正法案(PEC)の報告官のマルシオ・ビッタール上議(民主運動・MDB)が参加した。マイア議長にとっては、コロナウイルス感染による自主隔離を終えての初仕事でもあった。
マイア議長はこの席で、政府支出の上限を厳守すること、つまり、今年度の予算案にインフレ率を考慮した額より多い支出を行わないことを強く求めた。これは大統領に対して、「レンダ・シダダン」の予算ぐりに関して「奇跡は起きない」ことを改めて主張したもの。
大統領は現在行われている福祉政策「ボウサ・ファミリア」を、コロナの緊急支援金の受給者にまで広げる新政策「レンダ・ブラジル」の創設を求めている。だが、大統領が求める「せめて300レアル」に足りるだけの資金源が見つからず、経済省が提示する200レアル台前半の額との開きが埋まらないことや、経済省スタッフがその財源として現在ある低所得者向け恩恵の廃止を検討していることが明らかになって中止になっていた。
だが、2022年大統領選に向けたイメージアップ戦略としての福祉政策を諦めきれない大統領は、「レンダ・シダダン」という名前での福祉政策を再考することを発表していた。だが、財源の説明がされないままだった。
この日の朝食会前までは、「レンダ・シダダンに基礎教育開発基金の一部が回されるのではないか」「支払額は250レアルから300レアルの間」といった噂だけが先行した状態となっていた。最も物議を醸したのは、ロジェリオ・マリーニョ地域開発相が2日に「歳出上限を破るのは止むをえないのでは」と発言したことだ。
この発言を聞いたパウロ・ゲデス経済相は、「もし本当だとしたら、なんと無礼な」と激怒。大統領は3日にシュラスコを開き、マリーニョ氏やゲデス氏を招待したが、マリーニョ氏は参加を断った。ただし、マリーニョ氏は5日の朝食会には参加した。
もっとも、マイア議長とゲデス経済相の仲も現在険悪だ。両氏は先週、激しい批判の応酬を交わしている。それは、同経済相がマイア議長に関し、「左派と結託して、政府が計画している民営化が進まないように企んだ」と発言して同議長を怒らせた。マイア議長は同日、ゲデス氏は「バランス感覚をなくしている」と批判した。
両氏は5日夜、連邦会計検査院で経済省関連の事柄の報告官を務めるブルーノ・ダンタス氏が主催する夕食会で顔を合わせ、公的財政を悪化させることなく、レンダ・シダダンを導入するための方策について話し合うことになっている。