日本とブラジルの友好連携を進める団体「ブラジル・ソリダリオ横浜」(斉藤達也会長)は9月20日午前、2018年から連続で3回目となる「横浜でみんなで祝おうブラジル日本移民」記念行事の112周年版として、横浜ワールドポーターズでシンポジウムを開催した。新型コロナウイルス感染症対策もあり、会場参加者の25人を上回る40人がZOOMによりオンライン参加した。
同日午後のサンバ、カポエラ、フレスコボールなど盛りだくさんなステージショーは、残念ながら雨のため中止となりました。
シンポジウムでは、サンパウロ人文科学研究所の細川多美子常任理事から「ブラジルの今―コロナと火災と日系社会」と題してオンライン記念講演があった。
高止まりしているブラジルの新型コロナウイルス感染や、恒例の盆踊りなどを自粛する日系社会の状況、その中でもコロニアの歌手たちのユーチューブ配信により、老人施設や障害者施設へ多額の寄付が集まる日系社会の新しい連帯の動きなどの「ブラジルの今」が具体的に報告された。
2年前の人文研の全伯日系団体調査でも、日系人を特徴づけるのは正直、真面目、誠実、勤勉だった。「チームワークでボランティアすることは日系人の大きな強み」といえるようだ。
大旱魃により世界的に特異な生態系であるパンタナールに発生した火災についても、報道と異なる事実や地域の人々の悲しみなど視野の広い細川氏らしい話が語られた。
アマゾン・べレンに入植して家族をもち、今は伊豆大島の富士見観音堂主となっている伊藤修師は、「日本人海外開拓移民先亡者の菩提を祈るーその先に見えるもの」と題して講演した。
僧侶となって伊豆大島で無縁仏となった海外開拓移民の菩提を祈るに至った経緯が語られた。伊藤師の導きにより参加者全員で、ハワイ・北米・中南米などの先亡者に黙祷を捧げた。
満州から日本に戻ってアマゾンに入植し、また日本に戻るなど、様々な先亡者達の生き様を日本の歴史の中に位置付け、それぞれの死について尊厳を持って見ていくことが、今現在生きるものに将来にも繋がる取り組みであるとの含蓄が含まれた法話のような講演だった。
また、JICAの前身OTCA時代から東北伯ペルナンブコでシャーガス病をはじめとする熱帯医学研究に携わってきたNPO-MAIKEN(南アメリカ遺跡研究所)の三浦左千夫代表から、「日本で生かされた移住地巡回医療の経験」との講演もあった。
「アマゾン先生」と呼ばれた細江静男先生を引き継ぐ移住地での活動経験、さらに日本に戻ってからの日系人への支援、東邦大学と連携した精神衛生のための心の健康相談にかかる取り組みが語られた。
同NPOは今後、ソリダリオ横浜との連携を図っていくとの方針が述べられた。
東京外国語大学ポルトガル語学科の学生で、学びの場を作るための遊びの活用に取り組むPlayble代表の山下里緒奈さん。その名前は、ブラジル・リオに由来しているという。遊びは自己表現であり、言葉の壁を乗り越え、人々の違いを越え、多文化共生を進める力となる可能性があると言う。日系・非日系にこだわらず、グローバル化の中で連帯していくことが大切だと訴えた。
シンポジウムの最後に、斉藤達也会長から「グローバル化の中で、ブラジルをはじめとする日系人および日系人を通じ、世界の人々と連携していくことが将来の日本のためにも重要である」との表明が行われた。