ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》来年初頭満期の国債が例年の2倍=更なる債券発行で返済?=改革進まずコロナ対策費かさむ

《ブラジル》来年初頭満期の国債が例年の2倍=更なる債券発行で返済?=改革進まずコロナ対策費かさむ

年頭に満期を迎える債務返済を約束するモライス氏(16日付エスタード紙の記事の一部)

 【既報関連】今年の公的債務は昨年より11・9%ポイント増え、国内総生産(GDP)の101・4%に達するとの予想が出ている中、来年1~4月に満期を迎える国債が6432億レアルもあり、財務局が返済で頭を悩していると16日付現地紙が報じた。
 来年早々に満期を迎える債務の額は過去5年間の平均額の2倍以上で、ブラジルが抱える公的債務の15・4%に相当する。
 しかも、新型コロナウイルスの感染拡大が収束していないため、パンデミックに伴う景気後退からの回復は緩やかで、年末時点でのGDP成長率はマイナス5・8%などと予想されている。
 さらに感染拡大抑制のための対応や、パンデミックで落ち込んだ経済活動を回復させるための景気刺激策などで、財政支出は増加の一途だ。
 歳入減の中で支出が増え、公的債務が膨らみ続けるという現状を中銀は「財政ショック」と呼んでいる。
 格付引き下げなどで長期国債が発行出来ず、6カ月~1年の短期国債発行で切り抜けなければならない事も状況を困難にしている。6カ月ものの債券の満期は4月で、年頭に返済が必要な金額を押し上げた。
 年頭に満期を迎える債券が平年の倍以上という事態は、コロナ禍で不安定になった財政をより不安定にし、国債の追加発行を余儀なくさせ得る。

 また、選挙年という事もあって税制改革を含む財政改革や行政改革が来年に持ち越されたのに対し、信用格付会社からは年内または年頭までに財政改革を行わなけば格付引き下げとの警告も受けているから、債務不履行(デフォルト)は何としても避けなければならない。
 こうした状況下、財務局公的債務担当のジョゼ・フランコ・デ・モライス氏は、通称「債務流動性クッション」と呼ばれる予備財源があり、1~4月に満期を迎える債務返済用資金は年内に確保出来ると保証する。この予備財源は、満期が来た債券を新しい債券と交換する必要を回避するために使われる。中銀は既に、財源補強のため、3250億レアルを国庫に移転している。
 これがないと、4月までの返済分は国債で賄わねばならず、10月満期の1年ものを含む今年後半の返済額がさらに膨らむという悪循環を生む。そうなれば、公的債務のコントロールは不可能となり得る。
 他方、中銀元総裁のアフォンソ・パストーレ氏は、年頭に満期を迎える国債が4月だけで3151億レアルに上る事態は「非常に深刻」との見解を表明している。同氏によると、ボルソナロ大統領や連邦議員らは財政危機に関する忠告に耳を傾けようとしていないし、ゲデス経済相も、未だに明確な経済政策を打ち出せていないという。
 専門家は、22年の大統領選で再選を果たすために大衆受けする社会福祉政策を打ち出す必要に駆られている大統領が、公的財政健全化に向けた改革に水を差す可能性がある事も懸念材料の一つと見ている。