ブラジルでの殺人事件発生率は2019年に過去10年間で最低を記録したが、コロナ禍の今年上半期は逆に増え、10分間で1人が殺されたと19日付現地紙が報じた。
18日に開かれた全国治安フォーラムによると、1~6月は人口100万人あたり25・712人が殺人事件の犠牲となっており、昨年同期より7・1%増えた。この数には殺人、強盗殺人、傷害致死、警官による殺害事件が含まれている。
従来のフォーラムでは前年の数だけが報告されていたが、今年は新型コロナのパンデミックの中で傾向が変化しているかを見るために、上半期の数字も公表された。
昨年の殺人事件は4万7773件、人口100万人あたりの発生率は22・7人だった。殺人事件の発生数や発生率は2年連続で低下しており、前年比で17・7%の事件数減少は、2011年以来の好結果だ。
連邦直轄区も州として数えると、19年の州別殺人事件はロンドニア以外の全州で減った。減少率が最も大きかったのはセアラー州の50・3%で、以下、ロライマ州47・5%、アクレ州28・9%、パラー州26・8%と続いた。
だが、今年上半期は27州中21州で殺人事件と犠牲者が増えた。殺人事件が最も増えたのは、昨年の減少率1位だが、2月に軍警ストが起きたセアラー州で、1190件が2340件に96・6%増加。
以下、パライバ州(458件が546件に19・2%増)、エスピリトサント州(542件が642件に18・5%増)、マラニョン州(766件が908件に18・5%増)、セルジッペ州(459件が536件に16・8%増)と続く。
例年は発生率低下をけん引するサンパウロ州も事件増加州に入っている。
他方、昨年は刑務所で大量殺人事件が起きたパラー州は1921件が1439件に25・1%減、国境封鎖で人の行き来が減ったロライマ州は128件が98件に23・4%減、リオ州は3061件が2728件に10・9%減など6州で殺人事件が減っている。
フォーラムによると、殺人事件増加傾向は昨年9月に始まった。特に、セアラー州では軍警ストという公的な治安政策の揺らぎが事件急増を招いた。また、犯罪組織による縄張り争いも殺人事件増長を招いているという。
パンデミックで外出自粛が始まった後、犯罪組織幹部は警備の厳しい連邦刑務所に移されたが、残された幹部による抗争が増加。航空便の本数減少や陸路での搬送制限などで麻薬の流通や販売を巡る抗争が地元中心に繰り広げられるようになった事も、殺人事件増加を招いたと見られている。
フォーラムの責任者で社会学者のレナト・セルジオ・デ・リマ氏によると、国からの投資減額や国家レベルでの治安政策の不足が、殺人事件を含む犯罪の増加を招いているという。
今年上半期の暴力事件の死者は2万5712人で、殺人事件で2万1764人、警官との抗争などで3181人(一部殺人と重複)、強盗殺人で719人、傷害致死で375人が死亡。警官の死者も110人出ている。
上半期は女性殺人も昨年同期比で1・9%増の648件起きている。