「既に多くの日本人のお客様たちにもご来店いただいております」と語るのは、3年前にリベルダーデ地区にタイ料理店THAI E-SAN1号店(Rua Barão de Iguape,446)をオープンしたフィリピン人のマリリン・キパオさん(Marilyn Quipao、46歳、マスバテ生まれ)。
それまでブラジルではなかなか味わえなかった本格的なタイ料理の数々で瞬く間に人気店となり、既に日本人で同店の存在を知る人も少なくない。8月27日には同じ通りで2号店(Rua Barão de Iguape,373)もオープンし、リベルダーデ地区周辺に暮らすタイ人やフィリピン人はもちろん、アジア出身の人々の常連客も多い。
マリリンさんは2010年に、パトロンであるヨーロッパ人とフィリピン人の夫婦と一緒にブラジルに渡った。若い頃からタイやマレーシアでお手伝いさんや飲食店の仕事に携わり、ヨーロッパにあるいくつかの総領事館でも料理人を務めてきた。そのため、タイ料理にもしっかりと味に覚えがある。
ブラジルに来て最初はお手伝いさんの仕事に行ったが、報酬の悪さから短期間で辞めた。中国人経営のタイ料理店やお菓子店で働いて開業資金をため、レストランを起業するノウハウを学んだ。
「自己資金で小さくスタートするのがモットーです」。ピリ辛なスパイス感とハーブづかい、ナンプラー独特のうまみが、グルメの人々にも好評を得て、ビジネスチャンスを狙う複数の人々から何度もソシオ(共同経営)の依頼を受けたが、すべて断ってきた。
コロナ禍で2号店のオープンは予定より大幅に送れることになったが、新店舗を任せるために今年1月には息子(26歳)をフィリピンから呼び寄せ、マリリンさんのパートナーであるシェフマスターのタイ人とともに家族経営でコロナ禍の難局を乗り越えている。
助け合うフィリピン人女性たち
「マリリンさんは私がブラジルに来たばかりで困っていた時、助けてくれた恩人です」と、今日まで温かい交流を続けているのが、フィリピン人のアン・アラードさん(51歳、サンマリアーノ生まれ)だ。フィリピン人コミュニティーの憩いの場でもある同レストランで、ブラジルに来て1カ月後の2018年9月、新しい就職先と住居が見つかるまでの1カ月間、皿洗い兼ウェイトレスとして働いていた。
マリリンさんは、アンさんが資格を持つマッサージ師であることを知り、リベルダーデ地区のガルボン・ブエノ街にある台湾人と日本人の夫婦が経営するマッサージ店を紹介した。アンさんはその店で仕事を始めたが、直後にオーナーが変わり、18年11月からアクリマソンで韓国人オーナーが経営する『スパ・アクリマソン(Spa Aclimaçao)』(Rua Esmeralda 149, Aclimaçao)で働くようになった。
専門は妊婦・マタニティーマッサージ、リンパマッサージ、アロマセラピーで、他にも指圧、鍼灸、タイ式マッサージも行う。
「代替医療とウェルネスが最も私が情熱を傾けることのできる分野です。私はマッサージ治療が大好きです」と笑顔のアンさんは、ブラジルに来るまでにはアジア各国で働いた経験がある。(つづく)