ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》中国製ワクチン巡り激しくさや当て=保健省が購入宣言後に大統領が撤回=ドリア州知事「国民を優先すべき」

《ブラジル》中国製ワクチン巡り激しくさや当て=保健省が購入宣言後に大統領が撤回=ドリア州知事「国民を優先すべき」

コロナバックを詰めたコンテナ(Governo de São Paulo)

 保健省は20日午後、新型コロナウイルスのワクチンとして、中国製の「コロナバック」を4600万回分購入すると発表した。だが翌日になって、ボルソナロ大統領が「購入しない」と宣言し、波紋を投げかけている。21日付現地紙、サイトが報じている。
 エドゥアルド・パズエロ保健相は20日、州知事らとのビデオ会議で、中国のシノバック社が製造するコロナ・ワクチンのコロナバックを4600万回分購入すると発表した。コロナバックは、サンパウロ市のブタンタン研究所の管轄下、数州で治験が行われ、19日には最も安全なワクチンとの報告書が出たとの報道も行われている。
 同保健相は、国家衛生監督庁(ANVISA)の承認が取れ次第、同ワクチンの購買に動くと発表。連邦政府が19億レアルの予算を割く準備をしていることや、ブタンタン研究所に8千万レアルの投資を行うことも明らかにした。
 パズエロ氏によると、ワクチンは全国免疫プログラム(PMI)を通じ、全国的な流通を行うといい、600万回分を中国から輸入、残る4千万回分はブタンタン研究所で製造するものを購入するという。保健省の見積もりでは、来年の1月から全国で接種を実現化させるという。
 保健省はコロナバックの他に、二つのワクチンの契約を行っている。一つは、イギリスのオックスフォード大学とアストロゼネカ社が開発しているワクチンで1億回分、もう一つはコバックス社が世界保健機関(WHO)の協力で開発中のもので、こちらが4千回分の契約となっている。
 ところがこの発表後、大統領の支持者らが次々に批判の声を上げ始めた。21日朝には、17歳の支持者から「独裁主義の中国の支配下に置かれたくない。中国製のワクチンを購入しないで」と訴えられた大統領が、「中国製ワクチンは購入しない」と返答したことや、パズエロ保健相を「裏切者」と批判した支持者に、大統領が「立証されずに発表されたことはすべて裏切り」と答えたことなどが報道された。

 これらのニュースは瞬く間に広がり、「パズエロ保健相は軍人版マンデッタ」などと書き込む支持者も現れた。これを受け、大統領は「ジョアン・ドリア(サンパウロ州知事)の中国製ワクチンは購入しないし、ドリアとの対話も打ち切る」などと切り捨てるコメントを発した。大統領の怒りの矛先は保健相にも向かい、「マンデッタになりたくなったか」と、76%の国民の支持率がありながら4月に解任させられた保健相の名を出して批判した。
 大統領はその後、「治験中のワクチンに巨額の投資はできない」とした上、「保健省とANVISAの認可が下りないワクチンは購入しない」との言葉で、中国製ワクチンの購入取り消しを正当化しようとした。
 だが、連邦政府はすでに、ANVISAが未承認のオックスフォードのワクチンの購入契約を交わしている。また、大統領はコロナへの効用が否定されているクロロキン服用を推奨。保健相は先週末、コロナバックを購入する意向であることを大統領に報告していた。
 21日の大統領の反応を受け、ジョアン・ドリア・サンパウロ州知事は「大事なのは国民を救うことであり、政治がどうこういう問題ではない」と言って、大統領の言動を嘆いた。ボルソナロ氏とドリア氏は、3月からコロナ対策をめぐって激しい舌戦を繰り広げている。両者は22年の大統領選でも戦うことが予想されている。