医療機関が多数存在するサンパウロ市の中でも、一番の目抜き通りのパウリスタ大通りにある桜田クリニックは、患者のニーズに徹底して答えて今年で30周年を迎えた。
桜田クリニック院長、桜田雅美ローザ院長(二世・56歳)は1990年にサンパウロ州立総合大学歯学部を卒業。持ち前のチャレンジ精神から卒業と同時にサンパウロ市アクリマソン地区に診療所を開業。当時から日本語を話すことを強みに、パライゾ区やジャルジン区に勤務する駐在員やその家族を中心に診療を行った。
開業当初、ブラジルでは総入れ歯や部分的な義歯の治療が主流だった時代に、来院患者の要望に沿って先端技術のセラミックとインプラント治療をいち早く導入した。
92年には歯科治療の技術を磨くため、日本の歯科大学を代表する名門東京医科歯科大学小児歯科学部に1年留学。
帰伯後の93年、ブリガデイロ・ルイス・アントニオ大通りに診療所を新設。同時に、歯科留学で学んだ児童向け予防歯科検診や歯磨き指導をたんぽぽ学園やロベルト・ノリオ学校などの日系幼稚園に導入した。サンパウロ日本人学校にも校医として歯科検診を担当、28年間歯磨き指導を行った。
その評判が回りまわって96年には当時900人が勤務していたブラジル・ソニー社のバハフンダ工場内に、99年にはブラジル東京海上株式会社内に企業内診療所を設立。全盛期は6拠点もの診療所を経営した。
会社内診療所は一般的に、虫歯が原因で開いた穴への詰め物や抜歯といった応急処置のみの対応が主流であったが、同クリニックはより総合的で最終的な治療をする為、インプラントやセラミック歯素材の加工、ホワイトニングにも対応し各方面から信頼を得た。
一方、カリタス学園に診療所を贈呈し、その診療所の維持費を20年程寄付するといった慈善事業にも協力した。
2002年に心機一転で会社内に導入していた診療所などを全て売却。現在は桜田クリニックに専念し、日々患者の診察に汗を流す毎日を送っている。
桜田院長は「良い方々に恵まれ仕事は上手くいっていました。一方で、次第に経営業が中心になり患者様との診療時間が取れない日が増えたことや、子供が先に寝ている時間に帰宅する毎日に、日々自問自答し思い切った決断をしました」と当時の様子を語る。現在は子育て業も卒業、成人した息子と娘がいる。
診療科目を増やしてより便利に
2015年に保険会社から「日本語対応可能かつ一箇所で複数の診療ができるクリニックにできないか」という提案を受け、その年から各分野の専門医を雇い診療科目を増やしている。
現在では歯科の他に内科、小児科、耳鼻科、整形外科、整体(ストレッチリハビリ、鍼)など幅広い診療が受けられる程に。「少しでも患者様の悩みを解決できればとの思いで新たな要望をどんどん取り入れて行くことで、診療科目が増えました」と桜田院長は語る。
桜田クリニックは今年発生した新型コロナウイルスに対応し、迅速にオンライン対応を開始した。
「今回のコロナウイルスの影響で外出や対面などの行動制限がされ、皆の生活が激変しました。その新しい生活の中で患者様がどうすれば安心して治療を受けられるかを考えてオンライン診療を検討し始め、保健省が3月中旬にオンライン診療を認めた当日にサイトで公開しました」と導入した経緯を語る。
コロナに対応し、いち早くオンライン診療
「以前から内科担当の内村医師に電話やワッツアップなどで体調の相談を多々していました。その経験が功を奏して今のオンライン診療に活きています。治療とは診察だけでなく、正確に薬を飲み必要な検査をすることを意味します。ブラジルでは個人で薬を薬局に買いに行きますが、当クリニックのオンライン診療では診察後の自宅への薬の配達まで行っています。これは間違った薬の購入を防ぐことと、このコロナ禍で必要以上な外出を防ぐためです。ラボトリーと協力し、患者様が自宅でも血液検査や尿検査が受けられるよう出張検査を手配することが可能になりました。自宅から1歩も出なくとも完治が可能です」
同クリニックは、日本語対応が可能な病院が少ないという理由でブラジル国内や国外、サンパウロ州外に在住の患者をオンラインで診察した実績もある。
6月にはいち早く独自のコロナ治療法を実行し、早期治療の重要さを説明した。
「内科担当の内村医師は、外部の病院で延べ600人のコロナ外来患者を治療する傍ら当クリニックのオンライン診療のコロナ罹患者を対応してもらいました。内村医師はその患者だけでなく一緒に隔離生活を行う家族にも、毎日こまめな連絡を行い適切な治療を行いました。結果、幸いにも全員重症化せず事なきをえました。『自分はコロナにかかったのではないか』と恐怖心を持つ患者様から『先生と話を出来ただけでホッとしました』や『薬飲んですっかり治りました』と喜びのメッセージをいただくのが何より嬉しいです」。
対面診療の感染対策では、診療(歯科やリハビリなどを除く)は15分以内と決め、マスクやエタノール消毒、防咳フィルムでの感染対策、換気の管理、滅菌効果の強いUVC光線を設置し各診療後に滅菌作業を行うなどの対策を徹底している。
小さな信頼の積み重ねで30周年
コロナ禍を節目にフェイスブックやワッツアップなど各種情報媒体に、病院で対応するスタッフや医師達の生きた現場の情報の発信を開始した。その情報がコロナ禍中にブラジルに残っている駐在員や在留邦人、日本からブラジルへ戻るタイミングを見計っている日本人などのブラジルの状況判断をする参考資料にもなっている。
桜田院長のもとで14年勤務し歯科全般のアシスタントを行っているイザベル・マンシリオさん(42歳)は、「ここで働き始めて早くも14年が経ちましたが本当に働きやすい職場です。なぜなら、桜田院長は儲けよりも患者との人間関係やその人に合った最適な治療を一番に優先している為です。そういった小さな信頼が積み重なって30周年を迎えることができたと思います。これからも院長と共に患者様の要望を第一に努めていきたいです」とおおいに満足している様子。
桜田院長は「開業して30年。長い道のりでしたが、良いスタッフや先生方に巡り合って、本当に恵まれていると感じています。今年のコロナ禍でどんなに医療従事者が必要されているかかがわかり、それに応対していくことが自分の生きがいだと改めて感じました。出会いは縁、これからも一人一人の出会いを大切にしていきたいと思います」と笑顔で語った。
桜田クリニックではオンライン診療に加え、PCR検査・PCR抗体検査も受けられる。その他インフルエンザワクチン等も接種可能。日本の海外旅行保険も各種対応。日本語対応可。
詳細や問い合わせは(ホームページhttps://www.clinicasakurada.com/、電話、ワッツアップ=11・97724・7214/メール=rosakomori@gmail.com)。医院所在地(Avenida Paulista, 491, conj. 24, São Paulo)まで。