ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》国家衛生監督庁が中国製ワクチン輸入承認=サンパウロ州知事の意見通る=治験と技術移転に不可欠=国内製造分の判断は今後

《ブラジル》国家衛生監督庁が中国製ワクチン輸入承認=サンパウロ州知事の意見通る=治験と技術移転に不可欠=国内製造分の判断は今後

コロナバック(Twitter)

 ボルソナロ大統領とジョアン・ドリア・サンパウロ州知事との間で、新型コロナウイルスに対するワクチンを巡る争いが激化する中、ブラジル国家衛生監督庁(ANVISA)が、ドリア知事が推進する中国製ワクチン「コロナバック」の中国からの輸入を認めた。24日付現地紙が報じている。
 ANVISAは23日午後、中国の製薬会社シノバックが開発中のワクチン「コロナバック」600万人分の輸入を認めると発表した。このワクチンに関しては、エドゥアルド・パズエロ保健相が20日、ドリア氏をはじめとした知事たちとの会合で、19日付でブタンタン研究所に「(同研究所が)来年の1月初旬までに製造するコロナウイルスのワクチンを購入する」との文書を送ったと発表。保健省サイトにもその旨を掲載した。
 だが、「中国製」というところにイデオロギー的な嫌悪感を示す支持者たちの反応に押される形で、ボルソナロ大統領が「ANVISAの認可が下りていないワクチンはいかなるものも認めない」と反論。
 これを受け、保健省ナンバー2のエウシオ・フランコ氏が21日、「中国製のワクチンを買う意思はない」と発表した。これにより、ワクチンを心待ちにしていた国民から強い反発の声が起こり、野党が大統領罷免請求を出すことを示唆した。
 そうしたこともあり、ANVISAの動向が注目されていたが、同庁に関しては、もうひとつ気がかりなことがあった。それは、同庁のアントニオ・バーラ・トーレス会長をはじめとする役員はボルソナロ大統領に指名された人たちで、先週行われた上院の審査で承認されたばかりだったことだ。

 だが、トーレス会長は大統領発言後も、コロナバックの審査に関し、「外部からの圧力は受けない」「我々が重視するのは品質と安全性、効力だ」と発言している。
 今回の発表では、ブラジルで製造される予定の4千万人分のワクチンに関しては言及されなかった。この件に関しては、別途でANVISAの承認が必要だ。
 ANVISAの発表を受けて大喜びしたドリア知事は、24日にツイッター上で同庁への感謝を綴った。そして「残り4千万人分のワクチンを製造するためにも、600万人分のワクチンの輸入許可は不可欠だった。サンパウロ市のブタンタン研究所が作るワクチンは、ブラジル製のワクチンになるんだ」と、自信を持って言い切った。
 ドリア知事はコロナバックの治験にブタンタン研究所をからませるなど、このワクチンに対して当初から熱心だった。22年の大統領選への出馬が予想される同知事だけに、外出自粛令問題も含め、大統領の敵対心はかねてから強い。
 コロナバックは既に、全国(7州)で9039人が最終段階の治験を行い、良い報告がなされている。また、保証をさらに強化するため、治験者を高齢者や子供も含む1万3千人に広げることが承認されている。26日には南マット・グロッソ州のカンポ・グランデでも治験がはじまった。