【既報関連】国家衛生監督庁(Anvisa)が28日、新型コロナに対する中国製のワクチン「コロナバック」4千万回分を生産するための原材料の輸入を認めたと28、29日付現地紙、サイトが報じた。
原材料輸入はサンパウロ市のブタンタン研究所が9月に「例外的措置」として申請していた。同研究所は今月、許可が出るのが遅いと苦言を呈したが、Anvisa側は「正規の手続きを踏んでおり、遅らせている訳ではない」と弁明。苦言直後に600万回分のワクチンの輸入が許可され、原材料の輸入許可も出た。
コロナバックの治験や購入・生産の話はサンパウロ州政府主導の下で進み、20日には保健省も購入を認める発言をした。だが、21日にボルソナロ大統領がキャンセルを命じ、物議を醸した。
大統領は「保健省やAnvisaが認めていない」「国民はモルモットではない」としてキャンセルを正当化したが、Anvisaの許可が出ていないという点は政府が購入を認めた他の二つのワクチンも同レベルで、大統領の行動は政治的・イデオロギー的な理由によると見られている。検察もキャンセルの背景捜査に乗り出す意向だ。
中国シノバック・バイオテック製のワクチンは治験の最終段階にあり、ブラジルでも既に9千人以上が治験に参加したが、35%に軽度の副作用が出ただけで、重篤な副作用は報告されていない。
サンパウロ州のジョアン・ドリア知事は19日に「世界で最も安全なワクチン」と報告したが、ブラジルでの治験は1万3千人規模に拡大されており、効用に関する最終報告書の提出は年末となる。
コロナバックは既に、中国国内やアラブ首長国連邦で緊急使用が認められている。シノバックは治験国をさらに増やしており、9月初旬には、同時点でのワクチン接種者からの発症者はゼロとの報告も行っている。
コロナバックは不活性化ワクチンで、治験に際しては、被験者の半数にワクチン、残る半数に偽薬を接種。接種回数は2回で、接種後の抗体取得率とコロナウイルスに感染した人の割合で有効性を判断する。
ワクチンと偽薬のどちらを接種されたかは治験者には知らされない上、偽薬接種者からある程度の数の感染例が出る事が必要なため、治験を行う国や地域を選ぶ際は感染拡大が続いている事が条件となる。
Anvisaが正式認可していない事や原材料の輸入許可の遅れで、ブタンタン研究所で生産する4千万回分のワクチンの完成は予定より遅れる可能性もある。
だが、ドリア知事は28日、ボルソナロ大統領の反対で保健省が購入を諦めた場合も、1億回分のワクチン購入は保証すると明言。国レベルでのワクチン購入と配布、実施が理想としつつ、他州の知事達との間では、政府が購入しない場合のワクチン配布に関する計画案が話し合われている事も明らかにした。
サンパウロ州政府が締結したのは年内に4600万回分のワクチン購入との契約だけだが、来年も5500万回分の購入が予定されているという。