あと2週間と少し経てば、いよいよ全国市長選だ。サンパウロ市はもちろん気になるが、2年後の大統領選、連邦議員選挙を占う意味で、全国的な動きがコラム子的には気になるところ。
そこで「少なくとも各州都くらいは」と思い、グローボのニュースで報じられている情報をもとに傾向を分析してみたのだが、一つの大きな事実に気がついた。
それは、政権与党のはずの社会自由党(PSL)から、ひとりも州都の市長が生まれそうにないことだ。2018年の下院議員選の前までは、議員のほとんどいなかった零細党PSL。ボルソナロ氏ひとりのカリスマだけで、労働者党(PT)とほぼ同数の下院最多党となったのだ。
それだけではない。各州で圧倒的得票数を獲得してトップ当選したのもPSLの議員だった。
その政党が、いくらボルソナロ氏が離党したからといって、州都の当落線上にある候補がだれもいないという事実には驚かずにはいられない。
同党はその下院議員選挙の結果、選挙放送の時間も豊富にあるはずなのだが、それも全く功を奏していなさそうなのだ。
仮に、ボルソナロ大統領が立ち上げた新政党「ブラジル同盟」が今回の選挙に間に合っていれば、当選者はそれなりに出ていたような気がする。いずれにせよ、ボルソナロ氏がいないと成立しないということに代わりはない。
だが、そのようなものが果たして本当に「政治勢力」と言えるのだろうか。
一国の大統領や首相が所属するような政党というものは、党内に「その気になれば大きな自治体を治められる」くらいの実力の人たちがぞろぞろいて、まずは党内で競い合って、のし上がった実力者が候補になるもの。そういう政党を今後、ボルソナロ氏や彼の支持者が築き上げていけるのか。そこに大きな疑問が残る。
もう一つ思うのは、18年の選挙の際に大流行した、「新しいタイプ」の政治参入者が早速ふるわないことだ。聖市市長選でアルトゥール・ド・ヴァル氏(パトリオッタ)は4%の支持率で5位、ジョイセ・ハッセルマン氏(PSL)は3%で7位。ともに反ジウマ政権のデモと自身のユーチューブの番組で台頭し、前者は聖州議、後者は下議に高得票数で当選。
コラム子も「サンパウロ州知事にはドリアじゃなくてジョイセがなればいい」という熱狂がネット上であったことを覚えている。それから考えれば、わずか2年で現実は残酷だ。
こうなった背景には、活動家から転身してボルソナロ派の政治家になった人たちへの失望があるからではないだろうか。「不正と戦う」などとデモでかっこいいことを言っておきながら、いざ当選したら大統領の腰巾着に過ぎなくなった。
遂には軍事独裁政権を求める言動を行うようになり、ネット上でフェイクニュースを拡散したとして捜査の対象にまでなってしまう。奇しくもそうした新しいタイプの政治家のほとんどがPSLの議員。国民はもうすでに答えを出しはじめている。(陽)