新型コロナウイルスのパンデミックの中、ブラジル国内では1~8月のワインの販売量が大幅に増えた。「国産高級ワイン」の販売量も増大しており、国内のワイン生産者達は新しい消費者をつなぎ止めようと、国産ワインの売り込みに力を入れている。
ブラジルでの「ワイン」の販売が伸びた事は、1~8月の販売量が3億1330万リットルに達し、昨年同期より37%も増えたという数字に表れている。
販売量が最も増えたのは7月で、2130万リットルだった3月の3倍にあたる6340万リットルを売り上げた。この数字は、これまでの最高だった、2019年10月の4770万リットルを32%も上回っている。
今年は、6月が6千万リットル、減少したという8月も4990万リットルで、19年10月を上回った月が3カ月続いている。
ただし、お祝い事などに使われる「発泡ワイン」は例外で、1~8月の販売量が、昨年同期より5%少ない880万リットルに減った。
1~8月の販売量は、ワイナリーがスーパーや商店、レストランなどに販売した数字と輸入品を合わせた数字で、最終的な消費量とは直結しない部分がある。だが、外出自粛などで自宅にいる時間が長くなり、自宅で食事をする機会が増えた事などが、消費を後押ししたようだ。
国内の生産者達は、8月の販売量が前月比で21%減少した事を、「経済活動の再開と関係がある」と見ている。
他方、1~8月の「国産高級ワイン」の販売量は、昨年同期より93%増えた。ドルが40%高くなり、「輸入品に手を出すのをためらう人達が国産品を購入するようになった証拠」と見られている。
「国産高級ワイン」の販売量急増はベースが非常に低いせいもある。「国産ワイン」市場における「国産高級ワイン」のシェアは全体の6%に過ぎない。シェアの67%は、より安価な品種のブドウで作られる「テーブルワイン」が占めている。「テーブルワイン」は飲み物の専門家達から良い評価を受けていない。
ブラジルの生産者達は「ブラジル産高級ワインは、アルゼンチンやチリ、ウルグアイといった隣国産ワインと肩を並べており、フランスやポルトガル、イタリアといった伝統的な欧州産のワインとも価格競争力がある」と見ている。
1~8月の輸入品割合が32%から27%に減り、国産品のシェア伸張を願う人達を喜ばせた。
生産者の中には、国内の消費者の心をつかもうと、ワイナリーの見学ツアーを組んでいるところもある。サンパウロ州内陸部エスピリトサント・ド・ピニャル市のワイナリー「グアスパリー」では、10月半ばから始めた見学ツアーが好評で、年末まで予約がいっぱいだという。
サルトン社の場合は、ジュースやウオッカ、ワインを含めた売上が40%増えたが、売上の40%は販売量が減ったとされる発泡性ワインが占めている。
アイディール・コンサルティング社では、今年のワインの消費量は1人あたり2・8リットルになると試算。2018年の1人あたりの消費量は2リットルだけだった。(10月29日付G1サイトより)