ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》連邦議会=17部門の優遇措置を継続=大統領の拒否項目を否決=両院で圧倒的多数が賛成

《ブラジル》連邦議会=17部門の優遇措置を継続=大統領の拒否項目を否決=両院で圧倒的多数が賛成

緊急支援金支給と優遇措置の延長を求める労組のデモ(4日付フォーリャ紙電子版の記事の一部)

 連邦議会が4日、ボルソナロ大統領が拒否権を行使した、社会保障関連の納付金減額期間延長問題で、拒否権を拒否(否決)した。これにより、17部門での納付金減額は2021年末まで延長される事になったと4、5日付現地紙、サイトが報じた。
 連邦議会が拒否したのは、コロナ禍による解雇増を防ぐために大統領が出した時短と減給を認める暫定令(MP936)に対して、議会が6月に加筆した項目を7月に大統領が拒否した件だ。
 今回の拒否項目の否決によって復活したのは、17部門では、通常なら給与の20%の社会保障院への納付金を、会社の収益の1~4・5%とする優遇措置を1年間延長し、21年末までにするというものだ。
 特定の分野への優遇措置はジウマ政権でも取られていた。今回復活した項目の対象は、コールセンター、通信業界、情報処理業界、運送業界、建設業界、繊維業界、製靴業界、皮革業界、動物性タンパク業界、自動車・トレーラー製造業界などだ。17部門の就業者は600万人以上に上る。
 コロナ禍による経済活動の落ち込みは、国内総生産(GDP)が2四半期連続で前期の実績を割り込む景気後退(リセッション)を招いた。連邦議会が優遇措置延長を暫定令に盛り込んだのは、景気が完全に回復する前に優遇措置が打ち切られれば、解雇が増えると判断したからだ。

 だが、歳入減を懸念するゲデス経済相は、大統領に拒否権行使を要請して、大統領はこれを受け入れた。だが議会は、企業家(雇用主)の声や景気の回復の度合いを基に、拒否項目の拒否を4日の議題に盛り込んだ。拒否権の拒否は下院430対33、上院64対2という圧倒的多数で決まった。
 ゲデス経済相は、優遇措置延長で来年度の歳入は49億レアル減るし、減収分を補う財源がないと懸念している。財政改革は前進しておらず、ゲデス氏が望む金融取引暫定納付金(CPMF、通称小切手税)のような新税導入は抵抗が大きい。
 今回の拒否権拒否は、政府と議会の根回しの結果でもある。政府側は優遇措置延長を認める代わりに、今年の予算の一部を連立与党の票田地域で公共事業を行うために流用する事を認めるよう求めた。具体的な要請は教育省の予算から61億レアルを地域開発省に回すというもので、4日には14億レアルの流用が認められた。賛同票を集めるため、政府側は連邦大学への予算減を埋め合わせると約束したが、財源は明らかにしていない。
 4日の拒否権拒否で一息ついた企業家達は、経済の基盤は雇用であり、雇用が減れば税収も減るとし、優遇措置延長で雇用維持が可能となると強調した。ブラジルテレマーケティング業者協会(ABT)は、優遇措置で経費の11%が節約できると試算する。17部門関連業界の労組では、優遇措置が延長されなければ、150万人が解雇される可能性があると試算していた。