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GREEN KIDS=ラップに込めた心の叫び=高橋幸春(東京在住ジャーナリスト)〈6〉

PIG

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 それだけではない。Fight―Aはインターネットテレビ局のABEMATVで配信されソロのオーディション番組「ラップスタア誕生!」に出場し、予選を勝ち抜き決勝に出場した。Season3(2018年)の4位入賞を果たしている。
「東京のライブ会場に着いたときは、もう始まる寸前だった。人がいっぱいで後ろの方で応援するしかなかった」(PIG)
〈スラム街って言ったって浴びるよFlashLight〉(「E.N.T」)
 GKはようやく日の当たる場所にその芽を出したばかりだ。
 結成当時、メンバーは13人だった。
「結婚した人もいるし、仕事で抜けた人もいる」(Flight-A)
 抜けた理由はそれだけではない。
〈消えた仲間今もアイツは檻の中〉〈あの約束も俺忘れてないから!/辞めた二人今を見てくれ!/lyric書けなかった俺だぜ?/今じゃボスだ/背負った看板 GREEN KIDS俺ら!〉(「E.N.T」)
 Flight-Aの右腕には「東新町」、Swag-Aのやはり右腕には磐田市の局番「0538」のタトゥーが彫り込まれている。彼らにとってはこの団地からすべてが始まっている。
〈逃げも隠れもしない俺達はここだ/0538ここから成り上がる〉(「escape」)
「一歩一歩階段を上がってきたって感じなんだ」(Flight-A)
 夢はまだずっと先にある。彼らは昼間働きながライブ活動を月に3、4回のペースで展開してきた。コロナ騒ぎによってライブはすべて中止になり、それどころか仕事を失ったメンバーもいる。日本で育ったデカセギ第二世代という現実には厳しいものがある。それでもGKは歌い続け、歩みを止めない。
〈今辛くたってここにいねえと/今更出戻る時間はねえよ…〉(「Worry」)
〈環境なんて関係ないさ/逆にこの街に感謝〉(「E.N.T」)
 彼らは逆境の中でもめげることなく、自分を見失うことももうなかった。
「ライブだけで食っていけるようになって全国をツアーで回りたい」(ACHA)
「そのためにはもっと曲を作ることなんだ」(Flight-A)
 次の目標はブラジルで撮影したPVを制作することだ。
 リリックの中にこんなフレーズが出てくる。「変わらないよroots」(「Real daily」)
 その「roots」に向けられたヘイトをはねのけてきた。
「愛や力に変えてきたヘイト」(「Worry」)
「Barcoっていう名前は日本に開国を迫った黒船をイメージして付けた名前なんだ」(Barco)
 黒船のような大型船はポルトガル語でnavioだ。barcoは小舟を意味する。GKは日本人、日系人、その他の外国人も共に生きる社会を日本に迫る小さな黒船なのかしもれない。
 厚労省によれば、現在日本で働く外国人労働者は約166万人。中国人、ベトナム人も多い。今後、次々に第二世代が誕生してくるだろう。
「俺たちはそんな連中の希望になりたいんだ。つらくっても頑張っていると夢はかなうぞって」(Flight-A)
 GKが紡ぎだすリリックは、日本で生きようとする彼らの叫びでもあり、新たなアイデンティティの誕生を告げる産声のようにも私には思える。(終わり)


BARCO – Medicine Feat. GG UJIHARA (Beats By:Chubby Rain)