ホーム | ブラジル国内ニュース | 《サンパウロ市市長選》政界御曹司と貧者代弁者が白熱討論=コーヴァス「経験不足」を指摘=ボウロス「エリート的」と批判

《サンパウロ市市長選》政界御曹司と貧者代弁者が白熱討論=コーヴァス「経験不足」を指摘=ボウロス「エリート的」と批判

コーヴァス氏(右)とボウロス氏(Twitter)

 15日のサンパウロ市市長選で1、2位に入り、29日に行われる決選投票に進んだブルーノ・コーヴァス現市長(民主社会党・PSDB)とギリェルメ・ボウロス氏(社会主義自由党・PSOL)が16日夜、1対1でのテレビ討論会に臨んだ。コーヴァス氏はそこで、ボウロス氏の経験不足を不安材料にあげ、ボウロス氏が「あなたには貧乏人の気持ちなどわからない」と切り返す緊迫した場面が見られた。16日付現地紙が報じている。
 サンパウロ市市長選の決戦投票は、サンパウロ州での影響力が圧倒的に強いPSDBの共同創立者のマリオ・コーヴァス元知事の孫と、セン・テット(土地なし農民運動)の一つであるホームレス労働者運動(MTST)のリーダーという、全く正反対の出自による異色の対決となり、話題を呼んでいる。年齢もコーヴァス氏40歳、ボウロス氏38歳と過去になく若い。
 その二人が16日、CNNブラジルのテレビ討論会に参加し、早速、厳しい舌戦を繰り広げた。
 まず、ボウロス氏がコーヴァス市長が行ったコロナ対策に関して「検査実施数が少なすぎる」と批判し、「自分が市長なら、第二波がやって来た場合、大量検査に感染経路確保という、第一波の際にやるべきだったことをやる」と挑発した。
 これに対しコーヴァス市長は、「一度作られた事業の設計士になるのは容易なこと」という言い方で理想と現実の違いを語ると共に、「自分は衛生上もっとも安全なことに従った」とし、「コロナ対策の批判をすることは最善の努力を尽くした医師たちに失礼だ」と切り返した。
 ボウロス氏はそれに対し、「その事業とやらがうまくいかなかったから、(ニューヨーク、メキシコ・シティに次ぐ)世界3番目の感染者数になったのではないのか」と反論した。

 コーヴァス氏はこの日、ボウロス氏への影響も大きいルーラ元大統領やフェルナンド・ハダジ元サンパウロ市市長らの労働者党(PT)関係者を攻撃する姿勢を見せなかった。コーヴァス氏は「政敵を責めるのではなく、市にとって益になることを語るべきだ」と建設的な討論にしようとした。
 これに対しボウロス氏は、「ジョアン・ドリア知事はサンパウロ州の典型的なPSDBの後継者で、相変わらず市の周縁部を無視し続けている」と食らいついた。
 両者の議論は、「官民共同プロジェクト(PPP)」「健康」「クラコランジア」「住居」などの議題になるにつれ、白熱したものとなった。これらに関して、ボウロス氏が「PPPはエリート的雇用につながる」「クラコランジアはPSDB政権下でひどくなるばかり」と批判をすると、それまでは冷静さを保っていたコーヴァス氏も「あなたは公務の経験が足りない」「政策が過激すぎる」と批判し返した。
 コーヴァス氏は住居問題でPPPの導入を擁護したが、ボウロス氏は「あなたたちは家がない人たちのことを知らないから、市場が何でも解決すると考えるんだ。私は彼らのことを20年以上も前から、それこそ、名前まで知っている」と貧困層の代弁者であることを強くアピールした。