ジョアン・ドリア・サンパウロ州知事の推奨する中国製ワクチン「コロナバック」をはじめ、複数のコロナワクチンが実用化への動きを、ブラジルを舞台に活発化させている。19日付現地紙、サイトが報じている。
ブラジルでの実用化に関して一歩リードしているのは、中国のシノバック社が開発し、サンパウロ市ブタンタン研究所が協力するコロナバックだ。同ワクチンはすでに、国家衛生監督庁(ANVISA)から、中国からの600万回分の輸入とブラジルでの製造に必要な成分の輸入を認められている。その間、「治験者が死亡」との報道が流れ、一時治験が中断されたが、亡くなった治験者が自殺とわかり、難を逃れている。
そのコロナバックは19日朝、第一陣となる12万人分がグアルーリョス空港に到着。ドリア知事やブタンタン研究所のジマス・コーヴァス所長、ジャン・ゴリンチェイ州保健局長が空港で迎えた。
コロナバックはまだ治験の第3(最終)段階を終えておらず、それが終わらないとANVISAも実用化に向けた許可を出せない。同ワクチンはこれまでのテスト報告で好結果を得ているが、中国製ということでボルソナロ大統領が嫌っていること、ANVISAの役員が同大統領の指名によって選ばれていることが懸念材料だ。だが、コーヴァス所長は「来年1月までには本格実施させたい」と意気込んでいる。
米国のファイザー製薬とドイツのビオンテック社が開発したワクチンも、最終治験で「95%以上の効果があった」との報道が国際的に流れたことで、購入に向けた動きが国際的に広がっている。米国内ではこのワクチンの年内実用化に向けた動きが始まっているが、ファイザー関係者はブラジル政府にも「ANVISAの承認さえ得られたら、来年上半期に数百万回分のワクチンを提供できる」との話を持ちかけているという。同社ではすぐに承認へ向けたデータをANVISAに送付する姿勢を見せている。
ボルソナロ大統領がかねてから興味を示し、連邦政府が19億レアルで10万人分のワクチンを契約したとも報じられている、英国のオックスフォード大学のワクチンも、19日に世界的保健雑誌の「ザ・ランセット」に第3段階の治験第2弾の結果が掲載され、「高齢者での治験でも安全性が証明され、高い割合で抗体とT細胞ができた」と報告された。
ロシアが9月に公認ワクチンと発表した「スプートニクV」も、開発責任者が18日にANVISAの責任者との会議に出席し、治験の現状などを報告した。開発責任者は数日中に、ANVISAからの質問にも答える予定だ。このワクチンの治験と生産には、パラナ州政府が興味を示している。ただし同ワクチンは治験が世界保健機関(WHO)の求める基準に達していないために、実用が疑問視されている。
これ以外にも米国のジョンソン&ジョンソンが開発するワクチンもブラジルを含む国々で最終治験が行われている。
ANVISAは、ワクチンの実用化を早めるため、これまでは一括でしか受け付けなかった検証作業のためのデータを順次送ることも認めている。