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《記者コラム》2年を切った次のブラジル大統領選

ボルソナロ大統領(Marco Correa/PR)

ボルソナロ大統領(Marco Correa/PR)

 米国大統領選に全国市長選挙。ボルソナロ大統領が、すでに2年を切った次の大統領選にとって、なんとしてでも良い結果にしたかったものが、最悪の結果に終わった。
 トランプ大統領の再選失敗。今の時点で断言はすべきではないという人もいるかもしれないが、州の投票結果をひっくり返そうとして起こしている訴訟が州の裁判所で何一つ認められない状態では、最高裁での逆転などありえない。
 トランプ氏が政権から降りてしまうと、これまでボルソナロ支持者が好き放題に言っていた「陰謀論」の類が、大国・米国の大統領支持者の後ろ盾があったことで得ていた市民権を一気に失うことが予想される。
 ボルソナロ氏のコロナや環境問題に関しての放言もしかり。これまで通りには間違いなく行かない、
 さらに、終わったばかりの市長選では、大統領自身の政党設立が選挙に間に合わず、しかも、自分の推した候補がことごとく落選した。
 加えて同選挙の世論調査で、聖市での大統領拒絶率が今の時点で50%に達したこと、次男カルロス氏のリオ市議選での得票が30%も下がったことが明らかになった。
 大統領選挙2年前の時点で、最大の票田にしないといけないサンパウロ、リオの2大人口密集地で早くもこの嫌われ方。前途は多難だと言わざるを得ない。
 そんな中、市長選において、国民はすでに「次」を見越した動きに出たことも示されている。その象徴が「セントロン系政党の躍進」だ。
 社会自由党(PSL)やノーヴォなどの新興右翼政党の政治家の言動は早くも煙たがられ、ニュースで名前を聞く機会も増えた進歩党(PP)、社会民主党(PSD)、民主党(DEM)などの中道系候補の当選が相次いだ。
 国民としては、市民運動から成り上がった過激主張の素人政治家よりは、もう少しプロっぽい政治家を求めるようになった、ということだろう。
 大統領はすでにセントロンと共に歩む姿勢を見せているが、気になるのはDEMの動きだ。DEMは今年7月にセントロンを離脱。もともとボルソナロ氏とは折り合いの悪いロドリゴ・マイア下院議長を仕掛け人役とし、22年大統領選で目玉候補を出すことが予想されているからだ。
 これまではコロナ対策が好評で名を挙げたルイス・エンリケ・マンデッタ元保健相が有力候補だった。だが今の勢いなら、国民からかねてから支持率の高かった司会者のルシアノ・フッキやセルジオ・モロ前法相を迎えやすい状況になっている。
 マイア氏がかねてから「極右論者」と呼んで嫌っていることから、モロ氏ではやや微妙なところはあるが、マンデッタ氏とフッキ氏の線なら十分可能性があるはずだ。
 市長選の結果を見る限りでは、国民の気持ち的には「左派政権に戻るにはまだ時期尚早」の様相も伺えるため、中道が勝負をかけるなら今だろう。(陽)