米国の民主党は2日、殺害予告を受けているブラジルのタリリア・ペトローネ下議(極左、社会主義自由党・PSOL)への支持を表明し、ボウソナロ大統領の態度を批判した。2日付現地紙サイトが報じている。
この抗議文は米国の連邦下議のスーザン・ワイルド氏が出したもので、民主党所属の22下議が賛同署名した。
この声明の契機となったのは、リオ選出連邦下議であるタリリア氏が、繰り返し殺害予告を受け、出産後も悪化するばかりなので、9月に国連へ保護を求めたこと。
タリリア氏によると、最初に脅迫を受けたのはニテロイ市議に当選した2016年。脅迫はその後も続き、今年の6月にはリオ州市警から、5回以上の殺害予告の録音が聴取されたと公式に伝えられた。だが、この件に関する捜査は進まず、同氏は生後5カ月の赤子を連れて、リオ州を離れざるをえなかったという。
PSOLの政治家でこうした被害を受けているのはタリリア氏だけではない。2018年3月にはタリリア氏の友人でもあったリオ市議のマリエレ・フランコ氏が殺害された。ジャン・ウイリス氏も殺害予告を受け続けたことで下議を辞職し、国外に逃亡せざるを得ない状況に陥った。この3人はいずれも黒人でもあり、マリエレ、ウイリスの両氏は同性愛解放運動者でもあった。ブラジルでは16年以降、少なくとも125件の政治家殺害や殺害未遂事件が起きている。
リオ州のPSOL政治家は、同州を拠点とするボルソナロ大統領と敵対関係にあり、同大統領支持者、とりわけリオ市のミリシア(民兵組織)からの反感が強い。ボルソナロ一家とミリシアのつながりはかねてから報じられており、マリエレ氏の殺害実行犯もミリシア関係者だった。
米国民主党の議員らは、「次期政権(バイデン)がこの伝言をボルソナロ大統領に伝え、ブラジル政府に基本的な人権や黒人や先住民、同性愛者、女性などの尊厳を尊重するよう求めることを期待する」とし、「ボルソナロ政権は人種差別から手を引き、環境問題に取り組むべきで、コロナウイルス否定論の流布もやめるべきだ」と主張。「ボルソナロ氏が国を分断しようとしたため、今年の市長・市議選は政治的な暴力が増え、政治家や支持者の殺害を招いた」「暴力的な時代の到来は、米国をはじめとした国の白人優越主義や外国人嫌悪の高まりと同時期に起こった」とトランプ大統領を揶揄した。
米国大統領選では民主党のジョー・バイデン氏が当選を確実にした。今後、こうした米国からの批判の機会が増加しそうだ。