ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》コロナ禍=噛み合わない保健相発言=4週連続で感染増でも「増加なし」=緊急接種は公立機関のみ

《ブラジル》コロナ禍=噛み合わない保健相発言=4週連続で感染増でも「増加なし」=緊急接種は公立機関のみ

週単位の新規感染者数が4週連続の増加となる事を推測させる保健省公式サイトのグラフ

 パズエロ保健相が2日、「これ以上、社会隔離やロックダウンについて語る必要はない」と語り、物議を醸した。
 また同日、国家衛生監督庁(Anvisa)は治験中のワクチンの緊急接種の可能性を示唆したが、同相は対象は公立医療機関限定と発言するなど、コロナ禍を巡るその政策や認識は、一般のそれから乖離していると2~3日付現地紙、サイトが報じた。
 保健相の発言は、コロナ禍に対する方策などを審議する連邦議会の調査委員会でのものだ。同相は「新型コロナによる感染は人ごみや個人的な接触、飛沫によって広がるというが、最も民主的かつ最大で2カ月間続いた選挙戦キャンペーンやイベント後も感染拡大が起きていないなら、これ以上、社会隔離やロックダウンについて語る必要はない」と発言した。議員達が気色ばんだのに気づき、「感染者の推移を示すグラフに変化はあったが、多少の増減は当然の事」と言い換えた。
 だが、保健省は2日現在の感染者は4万9863人増の643万6650人、死者は698人増の17万4515人と発表。11月8日以降、4週連続での感染者増は不可避だ。
 感染者や死者の増加傾向は、メディアが行う水曜日~火曜日の集計でも明白で、1日時点の7日間の1日平均の死者は526人で、14日前の平均より35%増えた。

 感染者や死者の増加で医療崩壊が起きた、又は起きかけている自治体は、外出自粛の規制強化や専用病室の確保、一斉検査の実施を約束といった方策を採っている。急がない手術延期は私立病院にも及んでおり、100万人あたりの死者が1千人を超えた州は8、900人台の州も4に増えた。
 他方、Anvisaは同日、ブラジルで第3段階の治験中のワクチンの緊急使用に関する基準を発表。正式承認前のワクチン使用を認める可能性が出て来たのは、英国がファイザー社のワクチンを緊急承認して来週から一斉接種を始める事に触発されたのと、ブラジルの現状を重く見た結果といえる。
 緊急使用許可は、各製薬会社からの申請書と第2、第3段階の治験結果、製品の安定度などを厳正に審査後に出される。緊急使用許可は正式登録の認可を意味しないし、エルシオ・フランコ保健省特別局長の議会発言によれば、非常事態宣言期間中(年末まで)限定だ。
 緊急接種の対象は医療従事者や高齢者などで、使用は公的機関限定だから、私立病院は対象外となる。ブラジルで現在治験中のワクチンは、オックスフォード大学とアストラゼネカ社が開発中のものとシノヴァック社のコロナヴァック、ファイザー社とビオNテック社が開発中のもの、ジャンセン社が開発中のワクチンの4種。
 サンパウロ市のブタンタン研究所は3日朝、国内で分包するコロナヴァックの原料100万人分を新たに受け取った。