ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》会計検査院=コロナ禍で事業繰越し容認=特例処置に不安視する声も=拡大解釈すれば予算形骸化?

《ブラジル》会計検査院=コロナ禍で事業繰越し容認=特例処置に不安視する声も=拡大解釈すれば予算形骸化?

かじ取りが注目される経済省(4日付エスタード紙の記事の一部)

 連邦会計検査院(TCU)が2日、今年度予算に計上された事業を21年中に行う事を認める判断を下したと3日付エスタード紙が報じた。
 この判断は地域開発省の要望を受けた国家総弁護庁の要請に基づくもので、通常予算に計上された事業と新型コロナのパンデミックに伴って出された特例クレジットに適用される。
 今年度予算に計上された事業の中には、パンデミックで生じた緊急支出や税収減などによる資金不足で、実施の先延ばしを余儀なくされたものがある。地域開発省はこのような事業の来年度実施を希望しており、TCUがそれを認めた事になる。
 ただし、今年度予算に計上された事業実施に伴う経費は、インフレ率以上の支出増を禁ずる歳出上限規制の対象となるため、来年度予算に計上されている事業の経費削減や来年度の事業の先延ばしが必要となる。新型コロナのパンデミックに伴う特例クレジットは歳出上限規制の対象外だ。
 政府予算は例年、前年度までの事業経費未払い分(restos a pagar)の支払いや税収減などで、予算凍結や予算削減を強いられる。これを防ぐため、TCUは通常、前年度までの事業の未払い経費を減らすよう求めていたが、今回は正反対の判断を下した事になる。
 今年度予算に計上されているが実施出来ずにいる事業経費は、地域開発省だけで39億レアルだから、40億レアル程度の未払い経費の発生は必至だ。

 未払い経費が増えれば、国庫が圧迫されるのは明白で、経済省は来年早々にどの省のどの部分で予算凍結を行うかを決める必要に迫られる上、経費増による赤字拡大で財政責任法に問われる可能性も出てくる。
 経済省や上院独立監査院はこのあたりの事情を熟知しており、ゲデス経済相は3日、具体的な財政目標を提示する意向と歳出上限規制や財政責任法を擁護する姿勢を明らかにした。
 他方、政府関係者と議会内のリーダー達はTCUの判断後、連邦予算基本法(LDO)にもTCUの判断を反映させる事ができないかを検討し始めた。LDOは連邦政府や地方自治体の予算編成のガイドラインで、複数年度で予算を策定するため、TCUの判断を来年度のLDOに反映させれば、21年度予算に計上された事業を、大統領選などが行われる22年に実施する事が公然と認められる事になる。そうなると現職に有利に働くと見られている。
 4日付エスタード紙によると、議会は既に、TCUの判断を来年度の予算とLDOの双方に適用する方向で動いているようだ。LDOの審議は16日に行われる予定だ。
 ただ、このような交渉が進めば、当然の事ながら、経費の未払い分が雪だるま式に増える可能性があり、予算案そのものが形骸化し、財政管理がより困難になる危険を伴う。
 一部の専門家は、TCUの判断はパンデミックという事情を考慮し、予算消化のあり方に一時的な柔軟性を持たせようとしたもので、今回の緊急判断を拡大解釈する事は悪い結果を招き得ると警告している。