保健省は7日、新型コロナウイルスのワクチンとして、米国のファイザー製薬とドイツのビオンテック社が共同開発しているワクチンを7千万回分購入する方向で交渉中と発表した。国内外からの圧力を受けた結果だが、これまでの保健省のコロナ・ワクチンに対する方針に一貫性が見られないため、8日に保健省が開催した知事たちとの会合では、保健省への批判が相次いだ。8日付現地紙、サイトが報じている。
7日夜の保健省の発表によると、ファイザーとビオンテックとは「2021年に7千万回分のワクチン購入」で交渉を進めており、「早ければ今週の前半にも合意書を取り交わす予定だ」という。来年のいつ頃になるのかの見通しは示していない。
ファイザー社のワクチンは「9割以上で効果」との最終段階の結果が出ており、現在、全世界的に提供をはじめようとして働きかけている。8日には先進国の中で先陣を切る形で、イギリスで高齢者、医療従事者を対象とするワクチン接種がはじまった。
欧州諸国や南米でも提供契約を結ぶ動きは進んでおり、ブラジルに対しても先週、今週中に要望を出すよう、期限を区切っての交渉を持ちかけていた。外国からの需要急増は予想以上で、ファイザー社は米国政府に対し、「6月か7月までは国内需要の追加はできない」との通達を行ったほどだ。
だが、保健省の発表は多くの人を混乱させた。それは保健省が先週、イギリスのオックスフォード大学とアストラゼネカ社の共同開発のワクチンの購入だけを想定したプランを発表していたためだ。その計画では、オックスフォード・ワクチン1億4290万回分を4段階に分けて接種することが想定されていた。その計画通りなら、60歳以下の健康な人へのワクチン接種は2022年になることが示されていた。
そこにファイザーの契約が加わることで、予防接種計画がどう変わるのか。また、国家衛生監督庁(ANVISA)の許可がどれ一つ出ていない状態の中で、サンパウロ州政府が7日に中国シノバック社の「コロナバック」の予防接種を21年1月25日から開始すると発表した。
さらに、パラナ州はロシアの「スプートニクV」の購買契約を交わしていること、連邦直轄区はベルギーのジャンセン社のワクチンの最終テストを行っていることなどのバラバラな状況が整理されていない。
この件に関してボルソナロ大統領は、「ANVISAの審査を通るワクチンなら、すべての国民に非強制かつ無料で提供できる」と語っている。その一方で、大統領はコロナバックを中国製という理由で嫌い、ANVISAでの審理に圧力を加える疑いを持たれている。
このため、保健省は全国の知事たちとのビデオ会議で、ワクチン政策を明確にするよう知事から求められた。エドゥアルド・パズエロ保健相は「ANVISAがワクチンを承認するには60日間かかる」ことやアストロゼネカのワクチンの治験結果は今月中に報告されるはず」であること、保健省が進捗状況を観察しているワクチンは9種あることなどを明らかにした。
これに対し、知事たちからは、一つの州だけが単独で接種を行っても、効果が薄いのではといった疑問が出された。また、コロナバックを推進するジョアン・ドリア・サンパウロ州知事は「ANVISAが政治的思惑で承認するワクチンを決めるのでは」との疑問も呈した。
ロドリゴ・マイア下院議長は7日、「ワクチン対策が確定していなくては国民も不安だ」とし、今週中に議会が予防接種計画作成に加わることに関する審議を行い、早期に接種計画を法案化するとの意向を表明している。