新型コロナの予防接種ワクチンの選定や接種開始時期に関する問題が、多くの国民の関心事となっている中、保健相が8日に開催した知事と政府との会合に先立ち、ボルソナロ大統領に辛口の批評をした知事がいた。
グローボニュース解説者のヴァルド・クルス氏に辛口の見解を示したのは、エスピリトサント州知事のレナト・カーザグランデ氏(社会党・PSB)だ。
同氏によると、ボルソナロ政権は新型コロナ対策を主導し、全国の予防接種計画を来年1月から始めるべきで、それがかなわなかった時は、政治的に弱体化し、2022年12月までの任期を死守する事さえ危うくなる可能性があるという。
「大統領が自分の犯したミスでがんじがらめにされて欲しくない」と前置した同知事は、「予防接種関連のプロジェクトを統括し、きちんと運営するべきだ。予防接種の開始は1月が望ましい。さもなくば任期満了の時期を早める」と続けた。同知事によると、任期満了の時期が早まるのは罷免という形ではないが、政治的に弱体化し、22年12月まで持ちこたえる力を失いうるという。
同知事の判断では、全国一斉に予防接種を行う事は、国民の命や生活を守り、より平静で通常の活動に戻る事を可能にするから、経済もより力強く回復に向かう事ができるようになる。
他方、政府の支援や賛同が得られないからと、一部の州だけが自分達の力で予防接種を行うような事になれば、経済は悪化し、失業者も増える。そうなれば、ブラジルは敗北者となってしまうともいう。
カーザグランデ氏は、ワクチン購入と接種の早期実施は国民の関心事であり、1月の接種開始が望ましいとした上で、8日の会議で国家衛生監督庁(ANVISA)が承認する全てのワクチンを政府側が購入し、全国民に予防接種を施すと宣言する事を期待していた。
だが、同知事の思いに反し、一部の州だけが接種を実施する事の危険性を指摘する声などはかき消された上、パズエロ保健相とサンパウロ州のジョアン・ドリア知事の口論が始まるなどして、予防接種計画はまとまらなかった。
保健省はこの会議で、国としてより明確な予防接種計画を早期に提示する事を約束したが、その後も、中国シノバック社製ワクチンのコロナバックも予防接種計画に含めるようにとの複数の知事からの要請に応える姿勢は見せていない。
一部のメディアの解説者らは、パズエロ保健相はロジスティックの専門家とされていたが、大量の検査キットが死蔵状態になっているのを見逃した上、国民の健康以上にボルソナロ大統領の機嫌を取る事に傾注し、建前論を振りかざしただけで会議を終えたとの声も出ている。
保健省が購入にゴーサインを出していたのにボルソナロ大統領が購入をキャンセルさせ、大統領とドリア知事の政治的な争いの道具ともなってしまったコロナバックには、10日の時点で11州、912市からの引き合いが出ている。(8日付G1サイトなどより)