新型コロナウイルスのワクチンをめぐってエドゥアルド・パズエロ保健相の意見が朝令暮改するなど、連邦政府のワクチンの接種計画が迷走している。これに対して、司法や立法機関が保健省に対して態度を一貫させるべく圧力をかけはじめた。10日付現地紙が報じている。
パズエロ保健相は1日にコロナウイルスのワクチン接種計画を示し、「3月から英国のオックスフォード大学開発のワクチン接種をはじめる」との見解を出した。また、ファイザー社のワクチンにはロジスティック上の問題があるとしていた。
だが、7日には「米国ファイザー製薬とワクチンの購入で交渉中」と発言。これで困惑が広がった後、8日に全国の知事たちとビデオ会議を行った。
この会議では多くの知事が、購入予定のワクチンの絶対量の不足や、他国やサンパウロ州との足並みの違いなどに不満を表明。サンパウロ州のドリア知事とは口論の末、同保健相は「国の予防接種計画を決めるのは保健省だ」と啖呵を切る場面もあった。だが会議後には、「連邦政府は国家衛生監督庁(ANVISA)が登録したワクチンなら何でも買う」とも発言した。
さらに9日には「ファイザーが緊急使用許可を得ることができ、納品を前倒しできれば、12月からでもワクチン接種は可能だ」との発言まで行った。だが、この発言に対し、保健省のスタッフは「ANVISAの緊急登録を行える状況にさえない」として、12月中にファイザー・ワクチンの接種を行うのは不可能との見解を示している。
連邦政府のワクチン対策が迷走することに業を煮やした連邦議会や司法界は、一貫した態度を求め始めている。8日、下院では労働者党(PT)やブラジル共産党(PCdoB)といった左派系の野党議員たちから、ボルソナロ政権に対し、より具体的なコロナワクチン対策を明示するよう求める訴えが相次いだ。
とりわけ、コロナでの死者が17万7千人を超えた7日に、大統領が就任式に使用した衣装などの特別展をはじめたこと、ドリア知事とのコロナワクチンをめぐる政治権力争いに関して批判の声が相次いだ。
ブラジル弁護士会(OAB)は9日、最高裁に対して、「日本、米国、欧州、中国で登録されたワクチンをANVISAが72時間以内に承認しない場合、自動的に承認されたものとみなす」としたCovid法の適用を要請した。Covid法は、パンデミック初期に議会が定めたものだ。
また、国際的に認められた外国の審査機関が使用を許可しているワクチンに関しては、ブラジル国内でもその許可を有効とみなすことと、国の予防接種計画の明示を求める嘆願書も出している。
最高裁でも16日に「国民にコロナワクチンを義務付けるか否か」や、予防接種計画の早期提出に関する審理を行うなど、ワクチン接種問題に対する準備を進めている。
他方、ドリア知事が来年1月25日からの接種開始を一方的に宣言したコロナバックに関しては、シノバック社と生産上の提携契約を結んでいるサンパウロ市ブタンタン研究所が、中国から輸入された成分を使った分包作業をはじめている。同ワクチンは治験結果発表を待っているところで、まだANVISAへの登録申請すら行っていない状態。だが同研究所によると、すでに11州912市が関心を示しているという。