ブラジル情報局(ABIN)が、ボルソナロ大統領長男のフラヴィオ上議を不正資金疑惑から守るため、上議本人とその弁護士向けに少なくとも二つの報告書を出していたことが報じられた。国家諜報機関を、身内の容疑もみ消しという私的な目的で使用したと見られる行為は大きな波紋を投げかけている。11〜14日付現地紙、サイトが報じている。
この件は最初、11日付エポカ誌サイトが報じた。それによると、ABINは、フラヴィオ氏がリオ州議の時代に行っていたとされ、幽霊職員の給与をキックバックさせて不正着服していた容疑「ラシャジーニャ」に関し、連邦警察の捜査を無効にするための報告書を作成していたという。
このラシャジーニャでキックバックを受けていたファブリシオ・ケイロス容疑者(長男の腹心)は、今年6月に逮捕されており、フラヴィオ氏も11月に連警に収賄、資金洗浄、組織犯罪計画の容疑で起訴されている。
ABINの報告書の目的は「国税庁内で活動している犯罪組織の捜査からフラヴィオ氏を守るため」と記されており、その報告書の存在はフラヴィオ氏の弁護士たちも認めているという。
9月にフラヴィオ氏に送付されたという報告書ではまず、同氏のラシャジーニャ疑惑の証拠とされる金融活動管理審議会(COAF)のデータ入手の困難さが記されており、「国税庁の長や職員を交代させること」を勧めているという。
国税庁の人事異動は2019年から起きているが、「(以前の報告書に従って)19年の提案が実行されていたなら、フラヴィオ氏や公的な関心事は起きていなかっただろう」との記述があり、以前に別の報告書が作成されていた可能性がある。また、その報告の末尾で更迭を勧められていた3人の内の1人でリオ州国税局監査室長のクリスチアーノ・パエス氏は、2週間前に辞表を提出している。
ABINはさらに、国庫庁(CGU)、連邦データ処理管理サービス公社(Serpro)、国家総弁護庁(AGU)に関しても、ラシャジーニャ問題を解決する(不問に付させる)ために人事の異動を勧めていたという。
さらに二つ目の報告書では、COAFのデータを得るための具体的な指示が書かれており、その中には国税庁のジョゼ・トステス・ネット氏と会合を持つことまで書かれていた。また、Serproにフラヴィオ氏に関するデータ入手を求めるように指示もしている。
フラヴィオ氏の弁護人はすでに、Serproにフラヴィオ氏のデータ入手を求めているが、ABINの報告書には、Serproが要請に応えなかった場合は、CGUがAGUを通して入手することができるとの但し書きや、情報公開法を使ったデータ入手は、手書きの書類で要請するようにとの忠告まであった。
ABINの報告書では、「国税庁に3人の悪党がいる」との表現で、フラヴィオ氏告発につながった可能性のある人物としてパエス氏ほか2人の名前をあげ、首のすげ替えを勧めている。
ABIN長官のアレッシャンドレ・ラマジェム氏はボルソナロ家と家族くるみで交際している人物で、今年4月に大統領が連警トップに同氏を据えようとしたが、最高裁に却下されていた。ラマジェム氏を連警長官に据えるために当時の連警長官を解任したことが、セルジオ・モロ法相(当時)の辞任にもつながった。
この報道を受け、ラマジェム長官と、ABINを管轄しているアウグスト・エレーノ安全保障室(GSI)長官の解任を求める声が湧きおこっている。両氏は報告書の存在を否定している。また、ボルソナロ大統領の罷免を求める声が再燃している。