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《ブラジル》経済省=FGTS引き出しを再検討=非常事態の延長は未定=15日の死者900人超す

緊急支援金の支給は打ち切りが近づいている(Marcello Casal Jr./Agencia Brasil)

 連邦政府が来年の新型コロナ対策の一つに、勤続期間保障基金(FGTS)の緊急引き出しを検討中と15日付現地紙電子版が報じた。
 ボルソナロ大統領は10日に「パンデミックは終息間近」と語り、国内外の批判を浴びたが、コロナ禍で生じた影響は甚大で感染も再拡大している。連邦政府は第2波到来を認めていないが、経済省はコロナ対策継続が必要となる場合のための準備を行っている。
 同省が描く最も深刻なパターンは、パンデミック悪化で非常事態宣言を延長する場合だ。今のところ否定されているが、市場関係者の一部は不可避と見ている。
 経済省が検討中の案は、あくまで公的支出に影響を与えない事を優先している。財政管理が不能となって投資家の信頼を失えば、金利や物価が上昇し、失業者が増えるからだ。
 採用される可能性がある案は3つ、年金生活者への13カ月給、月収が最低賃金二つまでの正規労働者へのアボノ・サラリアルの前倒し、FGTSの緊急引き出しだ。
 これらの案の導入は今年導入したコロナ対策の効果を評価してから決まる。緊急支援金の受給者の一部はまだ最後の分を受け取っていないし、コロナ対策としての融資計画も効果がまだ続いているため、新対策を講じる必要の有無や具体策は1月末かその後に発表される見込みだ。

 当面は、時短と減給、一時帰休などの雇用確保策や、税や納付金の期限先延ばしは可能性がないようだ。
 FGTS緊急引き出しは検討中の対策の一つだが、FGTSは今年も緊急引き出しが認められたため、個人口座の残額が残っていない人がいる可能性もある。その可能性は低所得の人ほど高いため、この対策は中流家庭向けのものとなる。
 今年の緊急引き出しは380億レアルを市場に投入するためのもので、連邦貯蓄銀行によると、11月現在で引き出されていない79億レアルは、年内に引き出さないとFGTSに戻される。
 来年の緊急引き出しの可否は未定だが、FGTSは、政府の持ち家政策カーザ・ヴェルデ・エ・アマレラ、インフラ整備などの資金でもあり、緊急引き出しで回転資金が不足しないよう調整する必要がある。
 19年のFGTSは340億レアルの出超で、年末時点の残額は5360億レアルだった。今年は10月末時点で71億レアルの出超となっている。
 経済省がどんな対策を採るかは、社会隔離の度合いで判断される。もしも5月の水準で社会隔離(外出自粛要請)が行われれば、緊急支援金支給のように国庫に影響する対策が必要だが、現在程度の水準なら、13カ月給前倒しやFGTSの緊急引き出しなどの政策で切り抜けられると経済省では見ている。緊急支援金の支給には3200億レアルを要した。
 ゲデス経済相は、コロナによる死者が1日1千人を超えれば、非常事態宣言や緊急支援金支給の延長もありえると発言していたが、15日の死者は964人で増加傾向が続いている上、自治体の社会隔離も強化されている。