ホーム | コラム | 樹海 | 《記者コラム》やはり「あれ」は介入だったのか?

《記者コラム》やはり「あれ」は介入だったのか?

ラマジェム氏(Valter Campanato/Agencia Brasil)

ラマジェム氏(Valter Campanato/Agencia Brasil)

 11日に発覚したブラジル情報局(ABIN)による、大統領長男フラヴィオ上議のラシャジーニャ捜査揉み消し疑惑。これまでも数々の疑惑と騒動を巻き起こしてきたボルソナロ大統領だが、これは致命傷にもなりかねない、きわめて危うい疑惑だ。
 報道された内容はもちろんひどいものだ。国の諜報機関が、大統領の息子の犯した犯罪を反故にするために個人利用された。これが事実として証明されれば、罷免審理以前に犯罪行為。現行犯的な条件が整えば、逮捕さえありうるものだ。
 だが、そうでなくてもこの件がまずいのは、ボルソナロ氏の長男を助けるための機関利用の疑惑がこれで2回目、しかも同じ人物が関与したことが知れ渡ってしまっていることだ。
 ABINの長官はアレッシャンドレ・ラマジェム氏。彼の名前は今年の4月末、セルジオ・モロ前法相の辞任騒動の時に有名となった。「自分の家族の逮捕を防ぐために連邦警察の人事に介入した」とモロ氏に訴えられた大統領だったが、そのときボルソナロ氏がモロ氏の腹心でもあったマウリシオ・バレイショ警視総監を更迭し後任に据えようとしていた人物がラマジェムだった。
 指名直後、マスコミからはすぐにラマジェム氏がボルソナロ一家と家族ぐるみの付き合いがある友人であることが、ある年の大晦日を次男カルロス氏と浜辺で過ごした証拠写真と共に報じられた。その結果、このときはアレッシャンドレ・デ・モラエス判事の判断でラマジェム氏の警視総監就任は立ち消えとなっていた。
 この連警人事介入疑惑に関しては、モロ氏自身の大統領の疑惑の立証がもうひとつ決定打に欠ける内容であったため、ボルソナロ氏は命拾いしていた。だが、最高裁でこの件がお蔵入りしていたわけではなく、捜査そのものはまだ進んでいた状態でもあった。
 その矢先に今回の件だ。仮にこの疑惑を報じたエポカ誌が「フラヴィオ氏のラシャジーニャの記録を管理する連邦税務局の人事に圧力をかけようとした」とする報告書の現物を示そうものなら、その時点でラマジェム氏の引責が問われることになる。
 これは同時に「やはり、あのときの連警人事は介入だった」ということにつながる。モロ氏が「介入の証拠」として指摘していた大統領の「モロ、他の26州はおまえにやるが、俺はリオ、この1州だけが欲しいんだ」も決定的な意味を持つこととなる。
 この問題が今後どういう進展を迎えるかはわからないが、状況としてかなり危険なことは確かだろう。(陽)