最高裁が16日から17日にわたって、新型コロナウイルスに対するワクチンを国民に義務化するか否かの審理を行い、国や州、市には「接種を義務づける権限」があり、接種を拒否する人には制裁を加えることもできるとの見解が圧倒的多数となり、義務化を決めた。18日付現地紙が報じている。
今回の審理は、欧米でコロナワクチンの集団接種がはじまり、ブラジルでも来年の1月か2月に開始と見られるワクチン接種計画の成否を占う意味でも重要なものと位置付けられていた。
この審理は、ボルソナロ大統領が「ワクチン接種は義務ではない」と発言したことを受け、「連邦政府や州、市には接種を義務づける権利がある」とした民主労働党(PDT)の訴えに応えたものだ。
同件で報告官をつとめたリカルド・レヴァンドウスキー判事は、「何人もワクチンを強要されるべきではない」としながらも、「ワクチンを受けないことを主張する人々によって国民全体の健康が危険にさらされる事態は避けなければならない」と語り、ワクチンの義務化を支持した。
これは、16日の審理に同席したアウグスト・アラス検察庁長官も示していた見解だ。同長官も「義務化とは、国が拒否する人の体を押さえつけてやらせるという意味ではない」が、「ワクチンが義務化された場合に、接種を拒否する人には罰則が科されるべき」という意味での義務化だとしていた。
このレヴァンドウスキー判事の見解に、残り10人中9人の判事が賛成した。唯一、カシオ・マルケス判事のみは、州や市に義務化する権限を与える可能性を認めつつも、「事態がひどくなって、これ以上ほかに打つ手がなくなった時において」の義務化には賛成するとの見解を示し、孤立した形になった。
この日は、「親が宗教的または哲学的な理由から子供にワクチンを受けさせない権利」をめぐる審理も行われ、満場一致で却下された。こちらは「集団の健康が脅かされている中で、そうした個人的な信条は意味をなさない」とするルイス・ロベルト・バローゾ判事の見解に全判事が従う形となった。
ワクチン接種の義務化が求められる背景には、70%から80%の国民が抗体を持たない限り、新型コロナの感染拡大を完全に食い止めることはできず、国民の協力が必要とされるからだ。集団社会の中に抗体を持たない人の群れが残されれば、そのグループが新たな感染源となって感染拡大を招く可能性がある。
16、17日の審理でも、700万人以上が感染し、18万人以上が死亡している現状では、予防接種の義務化は必要との考えが主流となった。17日は新たに、6万9826人の感染者と1092人の死者が確認されている。
ダッタフォーリャが12日に発表した世論調査では、コロナワクチンの「接種を受けたい」人は73%、「義務化されるべき」と考えている人も56%いることがわかっている。
だが、抗体がいつまでもつかは不明だし、予防接種自体を嫌がる人々も存在する。また、極右支持者の中には「コロナは中国の人為ウイルス」として、ワクチンの効き目を疑う人も少なくない。ボルソナロ大統領も、最高裁での判断が義務化となった17日夜、恒例のネットライブ中継で「国としては義務化しない」との主張を続けていた。