ボルソナロ大統領が指名した最初の最高裁判事のヌネス・マルケス判事が、汚職撲滅のための「フィッシャ・リンパ法」の有罪判決者の出馬禁止期間に関して示した判断が、同法を骨抜きにしかねないとして物議を醸している。20日付現地紙が報じている。
これは19日にヌネス判事が民主労働党(PDT)の訴えに答えて行った判断だった。PDTの訴えは、「市長選候補者の中にフィッシャ・リンパの出馬失格が適用されるべき候補がいるが、現行法は最高裁の判断を経ておらず、憲法が認めた被選挙権を奪う」ため、同法の文言の一部停止を求めていたものだ。
同党によると、これまで55万7406通あった出馬申請のうち、フィッシャ・リンパで退けられたのは2357人だった。裁判で有罪となり、刑を終えてからも8年間、出馬停止となるのは、憲法で認められた基本的な権利とその保証としての出馬を禁ずるもので、憲法に抵触すると訴えた。同法は、2012年の選挙から適用されており、今年の選挙では出馬禁止期間の重さがこれまで以上に実感されていた。
それに関してヌネス判事は、「8年の出馬禁止期間は、裁判で最終的に有罪と確定した時からはじまる」との暫定判断を下した。これは、同法に規定された、「刑期を終えてから8年間」との文言の停止要請を認めたものだ。
仮に刑期が5年なら、5年が終わってさらに8年間、つまり13年間にわたって出馬ができないというのが、同法の規定だ。ところがヌネス判事は、刑期の5年を勤め上げた場合、その5年は出馬停止期間に含まれ、あと3年間待てば再出馬が可能になると判断した。
この判断はヌネス判事が単独で下したもので、現在行われている、20年の全国市長選、市議選に出馬した候補者の出馬登録の可否(当選候補者の当選有効の確認にも影響する)判断に用いられる。出馬登録の可否の判断は、高等選挙裁判所の監視の下で行われる。また、今回の判断は、最高裁の全体審理にかけられる可能性が強い。最高裁は既に、今年最後の全体審理を終えているため、審理そのものは来年に持ち越される。
ラヴァ・ジャット作戦支持派には「2審有罪確定での刑執行」に同意する人が多いが、ヌネス判事は憲法通りの「4審有罪で確定」との解釈の持ち主だ。さらにラヴァ・ジャットでの捜査対象者が最も多い進歩党(PP)とつながりが深い判事としても知られている。
なお、「フィッシャ・リンパ法」の生みの親でもあるマルロン・レイス退官判事は、ヌネス判事の判断は同法を骨抜きにしかねず、同法が裁可されて以来、最大の侵害行為と批判している。