サンパウロ州政府とサンパウロ市ブタンタン研究所は23日に新型コロナウイルスのワクチン「コロナバック」の治験結果を発表する予定だったが、当日になって急きょ延期した。開発元の中国のシノバック社からの依頼によるものだ。今回の結果をもとに、ブタンタン研究所は同日、国家衛生監督庁(ANVISA)にワクチンの承認を求める運びだった。23日付現地サイトが報じている。
治験結果を発表する記者会見は23日午後4時から、ブタンタン研究所のジマス・コーヴァス所長とジャン・ゴリンクテイン・サンパウロ州保健局長によって行われる予定で、現地メディアも待機していた。
だが、直前になってシノバック社から通達があったため、会見は中止になった。同社は、トルコやインドネシアといった、他の治験実施国の結果も踏まえて結果発表を行ってほしいと願ったという。コーヴァス所長は「効果ならある」とブラジルでの治験結果を改めて保証している。
サンパウロ州政府とブタンタン研究所は今回の治験結果発表と同時に、ANVISAにワクチン登録申請を行う予定だった。審査には10日間ほどかかる見込みだが、これまでANVISAはコロナバックに対して、中国からの完成品ならびにコロナバックを国内生産する際に必要な成分の輸入を許可してきている。
21日には、先日行った中国でのシノバック社の工場視察の結果、同社の技術や製造過程などはANVISA が求める基準を満たしているとの認定も行っている。
コーヴァス所長によると、サンパウロ州での接種計画の第1陣に予定している150万人への接種に足りる312万回分のコロナバックはすでに用意できているという。第一陣は医療従事者、先住民、キロンボ住民を対象とし、3週間のあいだをおいて計2回行われる。
州が確認しているところによると、24日にも550万回分のコロナバックが到着することになっている。28日に40万回分、30日に160万回分以上が加わり、合計で1080万回分が年内に届く予定だという。
万事うまくいけば、サンパウロ州はコロナバック接種開始を来年の1月25日からとしている。だが治験結果の提出が再延期されたことで、ANVISAの承認が遅れれば、この日に行えるかどうかは微妙だ。
同時に気になるのは保健省のプランとの兼ね合いだ。保健省はすでに英国のオックスフォード大学とアストラゼネカ社共同開発のワクチンとコロナバック、米国ファイザー製薬のものを中心に初期のワクチン実施計画を立てており、1月中にアストラゼネカ社製(オズワルド・クルス財団・Fiocruz製と表現)1500万回分、コロナバック900万回分、ファイザー社製50万回分を入手予定と発表していた。だたし国内専門家からはFiocruzの生産能力に疑問を呈す声も出ている。また3社のワクチンはいずれも、まだ、ANVISAの承認を得ていない。
エドゥアルド・パズエロ保健相が22日にTVブラジルの取材に対して明らかにしたところだと、1月の終わり頃から優先すべき人たちを対象とした接種がはじまり、2月には、1月に接種を行えなかった優先グループに対する大量接種に移行できるはずだとしている。保健省では、優先グループへの接種には4カ月、それ以外の人々への接種には12カ月を要すると見ている。